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「ゆきちゃん、明日は鞍馬に行くからよろしくね!」

「え?‥‥‥あ、あのっ、明日は土御門に行」

「あぁ、郁章殿にはオレが式を飛ばしておいたからね〜、明日ゆきちゃんを借ります〜、って」

「いや景時さん、私は借り物じゃないんだから‥‥」

「鞍馬は俺が幼少の頃を過ごした地だ。この前はゆっくり案内出来なかったからな」

「あら、いいわね。是非九郎殿に案内して貰いたいわ」

「いやあの九郎さん。朔も案内って‥‥」

「元宮は京都出身だろ?俺達の世界の鞍馬と、どう違うか教えてくれよ」

「有川くん‥‥」

「ゆき、私が守るよ」

「白龍っ!いやん可愛いっ!!」

「私の庵の結界も張り直さねば」

「‥‥‥この前先生が張り直してませんでしたっけ?」

「本当はゆきと二人きりで行きたいけどね。今回は我慢してやるよ」

「ヒノエ、今手を握らなくてもいいよ‥‥」

「ヒノエ、ゆきさんが困ってるでしょう?
‥‥‥一緒に、来てくれますね。ゆきさん?」

「弁慶さん‥‥でもっ」

「僕が、君を守ります。‥‥‥信用出来ませんか?」

「そ、そんな事は」

「では決まりですね、望美さん」

「はい!明日はよろしくね、ゆきちゃん!」



恐ろしくも素晴らしい協力技を駆使した、彼らの説得により、強引にゆきの鞍馬行きは決まった。


彼女の知らない所で全員が結託したような、そんな気がする。




(怨霊出て来たら、私なんか足手纏いになるのに‥‥)








ACT13.天を偲ぶ、人形の娘






鞍馬山は今日も快晴。

春の気配はもうすぐ過ぎ去ろうとしている。

先日登って来た時と同じ、静かな風景。



濃い緑の空気を思い切り吸い込んで目を閉じ、ゆきはふぅと息を吐く。



(ヤバい‥‥‥早速何か来た‥‥)



紛れもない、明確な殺意を感じる。

既にひとつやふたつではなく、四方から囲まれているようだ。




「この前よりも暖かくなりましたね」

「あぁそうだな、望美」



既に八葉達も感じ取っているのだろう。

さり気なさを装いながら、それぞれ布陣につく。



(‥‥‥あ‥‥)



殺意と、別に感じるもう一つの気配に、ゆきの身体は震えて来た。






怖い





「ゆきさん、大丈夫ですよ」

「‥‥弁慶さん‥‥‥ここにいたら、望美ちゃんの手助けが」

「君を守ると約束したでしょう?」



そう言って、弁慶はゆきの頭を撫でた。

いつもよりずっと屈託のない笑顔で。







気配は、もうそこまで迫っている。







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