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重衡の腕の中から力が抜けたので身を起こすと、辺りは凄まじい惨状が繰り広げられていた。
扉らしいものはどこにも見当たらず、代わりに多数の木片が存在している。
足元に落ちているのは梅の枝。明日惟盛に返そう。
さっきまで楽しそうに(遙香ビジョン)怪談話をしていた面々は、みんな地に倒れ臥している。
(何があったの?)
そういえばさっきは何だか煩くて、重衡が動きまくってた気がする。彼に必死に掴まっていたので記憶が曖昧だけど。
「重衡さん、一体何が‥‥?」
見上げれば、傷ひとつ、衣服の乱れすらもない重衡と目が合った。
「お怪我はございませんか」
「あ、はい」
それは良かった、と笑みを浮かべた。
壊れ物のように遙香の小さな手を包み込む大きな手。
触れ合った手から温もりが伝わってくる。
(暖かい手‥‥安心する)
「これからも、ずっとこうして貴女をお守り出来たら‥‥私は幸せです‥‥‥私の、可愛い人」
「‥‥‥えっ?‥‥‥‥わ、私?‥‥」
「ふふっ。もちろんです」
「‥‥‥〜〜〜っ!!‥‥」
案の定遙香は赤面して俯いた。
(彼女を真っ赤に出来るのは自分だけでありますように)
これからも、ずっと。
愛しき遙香。
終わり
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