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「‥‥‥‥その時、俺の背後から手が 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!
‥‥遙香!まだ絶叫シーンまでいってねえ!!」


将臣の話の途中で絶叫し、ぎゅうっと重衡の襟元を掴み上げて離さない遙香。重衡は背中をさすってあげた。

「大丈夫、こうしていれば怖くありませんでしょう?遙香」











「‥‥‥‥‥その琵琶の音が途絶えた時、私の身体は 「いやぁぁぁぁ!!」 ‥‥遙香殿っ!!まだ私の身体が浮いたとこまで話しておりません!!」


経正の話の途中で絶叫し、重衡の背中に手を回してすがりつく遙香。重衡はその身体にしっかりと腕を回して支えてあげた。

「‥‥ほら、私がついております。決して離れたりはしませんよ、遙香」












「‥‥‥‥‥わ、私の兄上がその時こぼした私のご飯粒を美味しそうに頬張り 「ブラコンいやぁぁぁぁ!!」 ‥‥‥‥ぶらこん?‥‥私が懴れているばかりに‥‥すまない」

「敦盛が可愛いだけですよ。仕方ないでしょう」

「経正殿‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥」


敦盛の話に拒否反応を起こし、経正の言葉にびくっと怯えて、益々しがみつく遙香。重衡は彼女が怯える原因に気付き、耳元で囁いた。


「大丈夫ですよ、可愛い遙香。重盛兄上も知盛兄上もぶらこんではございません。確かに世に言う戦しか頭にない兄と、細かな気遣いのない兄ですが、決してあのような弟好きではありませんから」

「‥‥‥聞こえてるぞ、重衡‥‥‥」

「‥‥‥‥クッ‥‥‥‥」

‘兄上’達が睨み付けてきたが、もちろん重衡は気にしていなかった。











「‥‥‥‥‥‥そこで私はこう申したのです。‘出てきなさい!怨霊、鉄鼠’ 「鉄鼠いやぁぁぁぁ!!」 ‥‥キィイ!私の可愛い鉄鼠になんて事を!!」


「うっ‥‥うぇえっ‥ううっ‥‥」


惟盛の可愛い怨霊である(本人談)鉄鼠がよほど怖いのか、号泣している遙香。重衡は今まで見た事のないような優しい表情で胸の中の少女を宥めていた。


「ほら、鉄鼠なら大丈夫ですよ、可愛い遙香。坊主と鼠の合作です。例え惟盛殿が『桜梅の君』と呼ばれ、女性達から熱い視線を浴びていようとも、頭に梅の枝を挿すような美的感覚の持ち主でしょう。遙香とは比べ物になりませんよ」


「んなっ‥‥重衡叔父上っ!!キィイ!!鉄鼠!相手をしてあげなさい!!」


かくして場内は凄まじい乱闘に巻き込まれた。

戦いの最中に「白刃光斬」とか「紅連光斬」とか聞こえた気がするが、気のせいだろう。



(重衡殿はよほど惟盛殿がお嫌いなのだろうか)

一人、戦闘から離れて屋根の上で笛を吹きながら敦盛は考えていた。













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