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「はぁ‥‥はぁ‥‥」


どれくらい走ったのだろう。


後ろを振り向くと、怨霊の鉄鼠とか言う化け物と、
花が抜け落ち怨霊の形相の惟盛が、追いかけて来ている。




待てよ、惟盛に捕まるのも嫌だけどさ、もし鉄鼠に捕まったら




鉄鼠とウェディング・ベル?





「‥‥‥嫌だぁぁぁ!」


本格的な涙が私の頬を幾筋も流れていった。










「‥‥‥‥も、限界‥‥」


既に日は高く登っている。



鉄鼠と惟盛は何とか振り切った。

ただ、走れども走れども、彼の姿は見つからない。



どこに、いるの。



「重衡さんっ‥‥‥!!」



涙混じりに呟いた時だった。





「‥‥‥遙香‥‥‥‥さん‥‥‥」




50メートル程先に、求める姿があった。




「しっ、重衡さぁぁぁぁん!!」




あぁ良かった。

彼ならきっと、判ってくれる‥‥‥。





勢いをつけて走り込んだ。


「重衡さん、あのねっ!!」



色々説明しようとする私の足が、重衡さんの数歩前でぴたりと止まった。



「‥‥‥?」



おかしい。

目の前にいるのは、確かにサラサラ髪の重衡さんなのに、私の体は警報を発しているようだ。




「‥‥‥‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」




この数歩の距離が埋められない。

何故だろう‥‥‥‥。









私が重衡さんの顔をじいっと見ていたら、背後から足音が近付いて来た。


また誰か来るの!?


身構えた私を庇うように、彼の腕が肩に回った。


密着する形になった彼の肩から漂う、艶っぽい香り。


‥‥‥ん?この香って‥‥?



目の前の人物と、漂う香の匂いとに違和感を感じた。


 

「兄上、蔵には遙香さんの姿など‥‥‥‥‥兄上っ!?」



「えぇぇぇ?重衡さんが‥‥‥‥二人?」





一体どうなってるの!?

呆然としている私の肩に手を回している重衡さんが、クックッ‥‥‥と笑い出した。


「‥‥まさかここまで、単純だったとはな」


「げっ‥‥‥知盛っ!?」





こうして私は、

知盛の許婚にされたのでした。






「重衡の姿ならば、油断するだろう‥‥?」


「その愛の深さに父は感動したぞ!なぁ時子?」


「ええ。愛ですわね」



「私の意思は?」


「無視の方向で?‥‥クッ‥」







頼みの重衡さんは、どこぞの山に呪詛だかに行ったそうです。







異世界にいるお父さん、お母さん。

私の就職が決まりました。


猛獣の飼育係です。
















いつか逃げてやる‥‥!


「逃がさないぜ?‥‥」


















終わり




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