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「い‥‥‥いたた‥‥」


気がつくと、私はゴツゴツした石の上で寝ていた。
頬に砂利がいっぱい付いてて、パタパタ払ったら手にちょっとだけ血がにじんだ。


「ここは‥‥‥?」



さっきまで学校にいた筈なんだけど‥‥‥

私、学校にいて、それからどうしたっけ?



渡り廊下で望美達とおしゃべりして‥‥‥‥

それから‥‥‥‥それから、覚えてない。



「そうだ!望美と将臣と譲!」



幼馴染みの三人を探さなければ、と、のろのろと体を起こして愕然とした。



そこは森だった。


あたり一面緑が生い茂っている。一本一本が大きくて、何百年とそこにあるような木々。



「やだ、こんな所‥‥‥知らない‥」




立ち上がり足元を払おうとして、またもやびっくりした。


私が着ていたのは制服じゃなくて、赤い花もようの着物だった。




どこからどう考えても、訳が分からない。



見知らぬ土地で見知らぬ着物を着て、望美達の行方もわからなくて。


心細さに何だか涙が零れてきた。













そんな時だった。

「風花っ!」


拳で目を擦っていたら、



私を呼ぶ
声がした。





聞くだけで胸が熱くなる、
そんな声。


 


炎みたいな髪が、太陽の光を受けてキラキラしている。

その人は私の名前を呼びながら、走ってきた。


「風花っ!」

「あっ‥‥」


手をグッと引きよせられ、倒れそうになった私は、そのまま強く抱き締められた。


「二日間もどこにいたんだい?」

「えっ‥ちょっと」

「‥‥‥随分探したぜ、姫君」

「‥‥ひ、姫君?‥‥‥ちょっと待って!」

「‥‥‥風花?」



私の顔を覗きこむ。


彼の顔がとても綺麗で、私は目が離せない。


‥‥ああ、瞳も赤いんだ。


「風花」

「なっ‥‥」


彼の顔が近付いたと思ったら、もう唇が触れていた。






パンッ!


乾いた音を立てて、私の手に熱が生じる。



「何するのっ!」

「は‥?」

「こんな事してきて、あなた一体誰なんですかっ!」

「風花?お前、何言ってるか解って‥‥‥‥‥」


そこまで言って、彼は首を振った。






じんじんする手より
赤くなった彼の頬より

傷付いたような彼の目に、私は心が痛んだ。





「だからどうして、私の名前を知ってるの?‥‥」




初対面の人にいきなりキスされて


被害者は私のはずなのに。




どうしてあなたが傷付いてるの。




どうして、私は、

そんなあなたを抱き締めたいって、泣きたくなるの。








  


   
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