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繋いだ手は

もう二度と離さない。





そう言わんばかりに


ヒノエは、固く堅く手を握って来た。





「風のように飛んで行く花を、閉じ込めてしまいたいけど‥‥‥‥‥‥行こうか。望美達が心配しているからね」






何処に行っていたのか

何をしていたのか


ヒノエが聞かないのは、
私の素性を知ってるからなんだろう。








きっとこの時点で、報告を受けているはず。

私が何者かを。





その上で何も言わない彼の優しさに、もう甘える訳にはいかないの。











私はたくさん間違えてしまって

たくさんあなたを傷付けてしまって



‥‥‥失って‥‥










それでも運命は


もう一度、機会をくれた。










二度と迷わない。

二度と間違えない。


今度は決して 失わせない。

あの時のように、どちらも選べない、のではなく


『家族』も

『愛する人』も


両方を選ぶ。






「今夜は、ヒノエと過ごしたいの‥‥ダメかしら?」


「へぇ‥‥‥随分と積極的な姫君だね。オレをこれ以上喜ばせてどうする訳?」


「話があるし」


「‥‥‥話、ね」


途端に真剣な眼つきになるヒノエを見て、確信する。



やはり、私が平家の人間だともう知っている、と。








‥‥‥そっとしておいてくれて、ありがとう。
繋いだ手にぎゅっと力を込めて、誘いをかけた。




「その後は、ヒノエでいっぱいにしてくれる?」



普段なら決して言わないような、恥ずかしい言葉も今だけは。



「‥‥‥‥‥‥それ反則。
何処までオレの忍耐を試す気なんだい?」



はぁ〜‥‥‥と深い息。



「仕方ないじゃない。ヒノエが私をこんな風にしたんだもの」




黙り込むヒノエ。
クスクス笑う私。





「風花」



呼ばれて顔を上げると、視界が彼の顔で一杯になっていた。


肩に手が置かれる。



「んっ‥」



唇が離れると、不敵な微笑。






「今夜は覚悟しときな風花。泣いても寝かせてやらないからね」


‥‥‥もしかして、挑発し過ぎてしまったのかも知れない。

私は引きつった笑いを浮かべた。







真実はきっと力になる。



あなたなら、きっと受け止めてくれると信じている。






私達は、二人で幸せにならなければ意味がないの。



その為に闘うと、堅く決意した。
















  




「風花‥‥っ!!」



宿の前には望美が、じっと佇んでいた。


私と眼が合うと、物凄い勢いで走って‥‥‥もとい、突進してきた。


そしてそのまま抱き付か‥‥‥‥勢い余って押し倒される。



「風花っ!風花‥‥‥良かった!!」


「のっ!!‥‥‥望美ぃ‥‥‥頭痛い」






何とかヒノエに助け起こして貰った私は、望美に手を差し出した。




「心配かけてごめんね望美」


「‥‥‥風花、本当に良かった‥‥‥また失うかと心配したんだよ」



ぎゅっと抱き締められて、泣きながら望美は訴える。



『また』失う?



詳しく聞こうとして、ふと足元に光る物を見つけた。




そこに落ちていたのは、望美のとても大事なモノなはず。


紐が切れていて、それに気付かない程必死に駆けてくれたのだと思うと嬉しかった。


それ程に心配してくれたんだと。




望美の腕を放した私は、それを屈んで拾う。



「はい、望美。白龍から貰った大切な逆鱗でしょう?‥‥‥落とさないように気をつけなきゃ」




にっこりと差し出す私に、望美は戸惑いながら受け取った。






「‥‥‥風花、これが逆鱗だって何で知ってるの?」


「何でって‥‥‥‥‥‥あ」


「これが逆鱗だと知ってるのは、白龍とリズ先生だけなのに‥‥‥」












『白龍っ!?逆鱗を外しちゃダメだよっ!!』


『神子‥‥‥‥‥‥生きて』


『‥‥い‥‥‥いやぁぁぁあああ!!!』










そうだった。
望美が驚くのも無理はない。

望美が白龍の逆鱗を持っている事は、『今の』私は知らないはず。








そこまで考えて、ふと疑問に思った。






白龍の喉にある筈の逆鱗。

それを持っているということは‥‥‥‥‥‥





私が答えに行き当たったと同時に、望美の顔が輝いた。






「‥‥風花っ!?あの風花なんだねっ!?」


「望美!?望美なの!?」

「‥‥‥‥‥‥会いたかった!!」






燃える京邸から学校に飛んでしまった時、はぐれてしまった望美。


同じ歴史を辿った『望美』は、


‥‥‥‥‥‥ここにいた。











「風花がいるなら、変えられる」


私達は再び堅く抱きしめ合った。
私の肩に顔を埋めた望美の呟きに、強く頷く。



「変えよう、望美」


「うん!!」





ヒノエは意味が分からず戸惑っているはず。

そう思いながら彼を見れば、意外と平然としていて。

‥‥優しい眼差しで私を見ていた。





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