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『ごめんね望美‥‥何も助けられなくて』
『気にしなくてもいいよ!武器なんか持てないのが普通なんだから!』
平家の人と戦いたくない私は、三草山の源氏の陣にて留守を預かった。
偵察に行った彼らが帰って来る。
譲が運んできた少年を見て、
表情を変えずにいるのが精一杯だった。
懐かしい、一門の男の子。
人のいない陣の一角で、私は彼の手を握った。
『じゃあ、敦盛殿も八葉?』
『あぁ、宝玉が私にもある。
何故このような懴れた身にあるのか、不思議だが・・・』
怨霊である彼は、ここでも苦しんでいた。
今の私には手を握るしかなくて、
けれども
振り払われない事に、これまでの絆を感じて涙ぐんだ。
『私が言う事ではないのだが、風花殿。
・・・叔父上が随分心配していた。
風花殿が帰って来ぬ、と・・・・・・』
『清盛様が・・・』
もうそろそろ潮時かも知れない。
気付かれぬように、源氏の軍も調べ終えた。
あまり深入せず、欲張らぬように。
でなければ気付かれてしまうだろうから。
切れ者と評判の軍師、武蔵坊弁慶に。
なのに望美に請われるまま、帰らずに熊野まで付いていった私に
再会は訪れた。
『兄さん!今までどこにいたんだよ!』
譲の声がする。
望美に連れられた将臣が宿にいた。
『よお、風花。久し振りだな!』
『将臣?すっかり老けたわね』
『望美と同じ事を言うなよ。三年半もここにいるんだ、少しは変わるさ』
将臣と敦盛殿と私は暗黙の了解で、繋りを伏せる。
・・・還内府である将臣が熊野に来た目的は、源氏と同じ筈。
熊野水軍の力
源氏と平家の大将が、ここに揃っているのを知っているのは、私と敦盛殿だけだろう。
敦盛殿と、気まずい視線を交わし合った。
もっとも将臣は、彼らが源氏で、望美が『源氏の神子』だと気付いてない。
望美に会えて嬉しそうな将臣に、私は何も言えなかった。
『良かったですね、望美さん。無事に幼馴染みが見つかって。
‥‥‥ねぇ。そう思いませんか、風花さん?』
『ええ、私も会えて嬉しいです』
武蔵坊弁慶‥‥‥例え彼が何かを勘付いていようとも、尻尾を掴ませる訳に、いかない。
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