(3/3)






話し終える頃には涙は止まり
激しい痛みが胸を苛んだ。





静かな室内。







頬を寄せた彼の胸、
穏やかに脈打つ鼓動を耳に感じる。





ヒノエは生きている‥‥‥




その事実にこんなにも安堵しながら、痛感した。





いつの間にかこんなにあなたを愛してる、と。





「風花」



優しい声に顔を上げる。



「大丈夫だよ。その時空のオレは死んでいないさ、絶対に」


「ヒノエ?」


「‥‥‥ありがとう、風花。オレを助けようとしてくれて」


「‥‥‥違うの、ただ私は‥‥‥」






最後の最後に足掻く事でしか選べなかっただけなの

あなたを。








「‥‥‥‥‥‥オレが今、どんなに嬉しいか分かるかい?」


「‥‥‥嬉しい?」




「時空を超えてまでオレを求めてきた事も
全てを話してくれた事も

‥‥‥それだけお前に愛されてるって事だろ?」


「そう‥‥‥だけど」




頷いた私をゆっくりと褥に寝かせた。


「えっ‥‥‥?」



腰の上に跨がったヒノエの眼が、真剣なものとなる。



「‥‥‥でも、二度とそんな思いはさせないよ」


「うん」


「姫君を守るのは、男の役目だからね」


「え?だって私、あなたを幸せにする為に来たのに‥‥‥」


守られてばかりじゃ幸せに出来ないのに。




ヒノエは何故か呆れた顔をしていた。


「‥‥‥お前ね。それはオレの言葉だから」


「そうなの?」


「それにオレは、風花がこの腕の中にいれば幸せだってこと。分かったかい?」


「‥‥‥うん。私も同じだから、分かる」



自分の存在が、愛する人の幸せ。

それってとても素敵な事。


















それから、私はヒノエを見上げた。


「ねぇヒノエ、約束を果たして?」



言い終わる前に、激しいキスの嵐。

‥‥‥耳元で囁かれる。



「記憶を無くしてから、ずっと押さえてた分‥‥‥‥‥今夜は覚悟しときなよ?」



明日、身体は大丈夫かな。



少し心配しながら、
高ぶる期待に目を閉じた。










運命の人が


あなたで良かった、ヒノエ。







もう一人で思い詰めたりしなくてもいい。


――それがこんなに幸せな事だと、思いも寄らなかった。



 



  
戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -