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『風花!!』


気がついたら火の海は私達のいる部屋まで迫っていた。

こんなに、火の廻りが早いなんて、計算外だった。







『こっちだ!』



彼が必死になって、手を差し延べる。



『私は‥‥‥!』




その時

ミシッ!

と私の頭上で音がした。





『風花っ‥‥!』


『あ‥‥』



天井の梁が燃えて、私目掛けて落ちて―――


ドン!!と走る衝撃。



『ヒノエ!!』



突き飛ばされた私が目を明けた時には、人の姿はなかった。



『ヒノエ!?どこ!』


『・‥先に逃げな、風花』



炎の向こうで声がする。




『嫌よ!!ヒノエ!』


『オレの事なら心配いらないから‥‥‥お前は早く逃げな』


炎の、むこうから。
いつもと変わらない口調で。




『嫌!ヒノエを置いていけない!』









なんの為に、私はあなたを裏切ったの。








『‥‥そっちに行くには火が邪魔だ。
別口から逃げるよ。

‥‥‥また後でな!』




あやすような穏やかな口調だった。

余裕すら感じた。



『でもっ!‥‥』


『お前はそんな女じゃないだろ!?オレの事を想うなら行けよ!!崩れる前に早く!』


『‥‥‥分かった』




後ろ髪を惹かれながら炎を避けて、火が廻り切ってない隣の部屋へと飛び込んだ。





『‥‥‥ごめん‥‥‥風花‥‥』





彼の謝罪が聞こえた気がしたから、



ふり向いた
私の眼の前で




さっきまでいた部屋の天井が


崩れ落ちた。










私の飛び込んだ部屋以外の、全ての天井が。





『ヒノエ!?‥‥‥ヒノエ!!‥返事をして!!』








何故

彼の逃げ道を




炎が全て塞いでるの











『やだ!!ヒノエ!!ヒノエってば!!』



『風花!駄目!!』



炎の中、戻ろうとした私の手を掴んだのは、望美と白龍。





『離して!お願い!ヒノエが!!』



彼の元へ行かせて。








『もうやだ!!風花までいなくならないで!!』





望美が激しく泣きじゃくりながら、私の身体を押さえ付けた。
力が入らなくて、共に座り込む。



そうして初めて、私の身体はどうしようもなく震えてるって気がついた。






煙る匂いと炎の熱に、意識がぼんやりしてくる。






『白龍!?逆鱗を外しちゃダメだよっ!!』




望美の混乱したような声。
顔を上げて白龍を見ると、喉にある白く輝く鱗に手を伸ばしていた。





逆鱗と言う鱗が白龍の喉から離れた瞬間、

彼の身体は透けていく・・・



『神子‥‥‥‥生きて』





『‥い‥‥いやぁぁぁぁぁぁあ!!』





私をきつくきつく抱き締める望美の慟哭を、同じ気持ちで感じた。


覆い被さる望美の体が、白く光った気がして、




何かに引っ張られる様な感覚を、覚えた。





 

















【風花】


大好きなの









【風花】


本当は側にいたかった









【愛してる、風花】


私も愛してると伝えたかった








―――ヒノエ













もし叶うのなら
あなたに会いに行きたい

もう一度








今度こそ


幸せに、なるために




 



  
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