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源義経は、白龍と神子の望美、譲と共に鎌倉の頼朝の元へと出ている。
福原の一件での申し開きをするのだろう。
この隙に、清盛様と頃盛殿、知盛殿が兵と共に京に入る。
数手に分かれ、源氏の者全てをおびき寄せる戦略。
如何に武蔵坊弁慶と言えど、正面から打って出るしかないだろう。
『風花様。邸には、景時の妹だけが残りました』
『分かりました。外で待ってて』
『はっ』
狙いは、梶原景時の京邸。
『・・・・・・風花!?風花なのね!何処に行ってたの!?』
一人で邸に入った私に、涙を流して抱き付いてくる。
『・・・朔。心配かけて、ごめんね』
『・・・・・・無事で良かった・・・・・・福原から戻ったらあなたがいなくて、皆、凄く心配したのよ。
・・・ヒノエ殿も、随分探して落ち込んでいたわ』
『・・・・・・・・・・・・・・本当にごめんね、朔』
呟いて、朔の鳩尾に拳を叩き込む。
意識を失って崩れ落ちる身体を背負い、邸の門で待機する兵の元へと向かった。
『いい?彼女は大切な人質よ。丁重に扱って。もし下手な手出しをすれば・・・・・・分かっているわね?』
朔を抱き取った兵の首に抜き身の刀を突き付けた。
彼は凄まじい勢いで頷く。
『はっ!!』
『お願いね』
『・・・風花様も、お気をつけて』
『ありがとう。頃合を見計らって出るから、心配しないで。それよりも、段取りは決して違えないで』
『はっ』
再び、一人で邸の中に入った。
もう、そろそろだろうか。
最奥で、一人佇む。
もっと胸が痛むと思っていたのに、
実際は、静かに凪いでいた。
心が麻痺しているのかも、知れない。
門が開く音がする。
『朔!?どこなの!?返事をしてっ!!』
親友だった彼女の悲痛な叫び声が聞こえる。
一瞬でも早く終えてしまいたかった。
もうすぐ、会える。
私を見つけるのは、きっと・・・
『・・・風花』
ほらね。
『久し振りね、ヒノエ』
にっこりと笑って、刀を構えた。
久し振りに会う彼の姿は、ここに至るまでの、戦闘の凄まじさを物語っていた。
武蔵坊弁慶達を叩き、
報せを受けて駆け付けた面々を京邸におびき寄せ・・・・・・
火を放ち、一網打尽にする。
逃げ出した所を知盛殿達が迎え撃つ。
それが平家の狙い。
ヒュッ・・・
風を切る音。
手筈通り、火矢を放っているのだろう。
私は、中であなたを迎え撃つ。
それが、自ら買って出た役目。
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