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「んじゃ、そろそろ帰るか」
「えっ?うん」
「え〜っ!?もう帰るの!?もっとゆっくりしてればいいのに」
「そうよ。兄上達がもうすぐ帰ってくるわ」
立ち上がった俺を引き止める望美達を見て、ゆきが申し訳なさそうな顔をしながら口を開く。
「うん‥でも、時子様が平家の皆で宴会するって張り切ってたから。そろそろ帰らなきゃ」
「そんな顔すんな。明日になりゃ神泉苑で会えるって」
「でも、話の途中だったのに〜」
尚も拗ねる望美の頭を撫でてから、俺は敦盛に視線を移した。
一緒に来るか?
と眼で問えば、小さく笑って首を振る。
「じゃぁ明日、神泉苑で。元宮、兄さんが寝坊しないようにくれぐれも‥‥‥って、元宮の方が寝坊しそうだな」
「確かに、ゆきは朝が苦手だから」
「うわ、敦盛くんまで!なんか傷付くなあ」
笑いながら手を振り、二人で場を後にした。
「もうすっかり元気になった?」
ゆきが帰り道すがら心配そうに見上げてくる。
最近の俺は、こいつのこの表情がツボだ。
心配そうにされる度に満たされていると‥‥‥本人は気付かないだろうな。
「あ?大丈夫だって。お前も知ってんだろ?」
「し、知って‥‥‥って、ひゃぁっ」
徐に足を止めて、ゆきの華奢な肩を引き寄せ首筋を舐める。
奇声を上げて首を竦める、物慣れないゆきは俺だけの花。
「俺がどんだけ元気か、身に染みてる筈だろ?‥‥‥毎日、可愛がってるんだからな」
「‥‥‥そ、その分だと大丈夫みたいだね」
溜め息混じりに呟くゆきはやっぱり紅い。
笑い出しそうになった俺は丁度、視線の隅に捉えてしまった。
「ゆき」
「ん?‥‥んぅっ!!」
突然名を呼んでキスをして、ゆきは物凄くびっくりしたらしい。
抵抗しようと胸を叩く彼女の、腰を掴んで引き寄せ動きを封じる。
舌を絡めゆっくり吸い上げる、その動作を繰り返せれば、やがてゆきから力が抜けた。
ゆきは俺のものだ。
「‥‥はぁっ‥‥びっくりしたんだから」
「悪い、お前があんまり可愛かったから、つい」
「‥‥‥‥将臣くんのバカ」
‥‥‥なぁ、今お前にキスした理由が
遠目に見たあいつの外套のせいだと言ったら、お前はどうする?
「なに?」
「ん?何でもねぇ‥‥‥ほら」
腕を曲げてゆきの前に突き出せば、クスクス笑って組んできた。
「明日の将臣くんの勇姿、携帯があったら撮れたのにな」
「は?んなモンなくても毎日お前を夢中にさせてやってるだろ?」
明日、和議は締結する。
望美の願うとおりに、今度こそ和議は成る。
「帰ろ、旦那様」
「‥‥‥お前それ意味分かってねぇだろ?」
「へ?結婚したら旦那様でしょ?」
「じゃぁ何だ、お前は俺のメイドか?」
「ちっ!違う!!そんな意味じゃない!」
傷つけて奪って散々泣かせた分、この世で一番幸せにしてやりたい。
それでも俺を好きだと言ってくれたお前は、俺にとって至上の存在だから。
たった一つの、幸せを
与えてくれたお前に
deity breath
祝福のキス
end
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