愛しきバディへ


彼と私の関係は、なんだろう。

嗚呼、言い表すまでもない。アシュリー・ポッターにとってのロナルド・ウィーズリーというのは、親友でも友達でも恋人でもない。ではなんなのか、と聞かれれば、彼はいつもの不敵な笑みをニヤッと浮かべて、こう言うのだろう。僕らは相棒なんだ。

そうそれが彼一人の認識だとは、彼は知る由もないのだけれど。





なんで、とか、どうして、という理性よりも、本能が好きだと叫んだ。彼は私にとって子どもの様な存在だった。それがいつしか心を開き、相棒として私と肩を並べた日から、そう日は経っていない筈だった。年下の子供として見るのではない。ちゃんと、彼を友人として、相棒として接すると自分自身がそう決めたのだ。なのに―――嗚呼、それなのに、どうして。

いつしか彼の輝きに惹かれている自分がいたなんて―――。



「(やっぱ、まずいよなあ……)」



思わず、頭を抱えてしまう。大体ロンにはハーマイオニーと結ばれるという運命が待っているわけで。それを言ったらジニーはどうするんだと言われてしまうと何も言えなくなってしまうけれど、少なくとも私の目から見ればロンはハッキリとハーマイオニーを好いている。ほんと分かりにくいけど。でも、確かに少しずつ、惹かれている。ハーマイオニーもまた、ロンに惹かれている。それを、祝福するのが私であるはずだった。それが“正しい形”である筈だったのだ。本来の“正しい形”が崩れつつあるとはいえ、そこは確かであるべきだった。

なのに私は、想い続けると誓った相手を忘れていき、

傍にいる人に惹かれていく―――。



「(だめとか、そういうレベルですらない)」



愛した男がいたのだ。今生を誓い合った男が、確かにいたのだ。もう二度と会えないとしても、向こうがもう私のことなんて忘れていたとしても、私は“忘れない”という選択をしたはずなのに。思い出も愛も、忘れないと決めていたのに。そう誓って私は戦いに赴く筈だったのに。

それを全て、覆されそうになってしまうなんて。そんなことがあってはならないのに、時が経てば経つほど私は思い出を、愛を、あの男を忘れていき、同時に傍にいる少年に、一回りも違う少年に、相棒だと信じていたかった少年に、既に想いの人がいる少年に、親友の想い人でもある少年に、惹かれていく。

嗚呼―――どうして、あぁ、どうして。

“相棒”という地位で、満足できなかったんだろう―――。




























「―――っていう夢を見たのよ」

「それ、今年一番のジョークだよアシュリー!」

「そうよねー」



なんて二人で笑いあいながら、寮の暖炉の前で紅茶を交わし合う私とロン。話の内容は、今日見た奇妙な夢の話。話を聞き終わると、ロンは一頻り笑った後にそう言い切ったのだった。



「アシュリーなあ……」

「ロンねえ……」

「やっぱ恋人とかじゃない気がするんだよね。好きなんだけど」

「私もあなたのこと好きなんだけど、やっぱ恋人とかじゃないのよね」



その場に双子がいたらなんて贅沢なこと言うんだ!とか茶々入れてくるだろうか。ロンは既にぬるくなった紅茶を一気に飲み干して、私の顔を再びマジマジと見つめる。私も、じっとロンの顔を見つめる。燃えるような赤毛はところどころ焦げているのは魔法を失敗したからだろうか。整った美少年、とは言えないけれど、やはり家系なのか、それなりに整った顔立ちをしていると思う。本人はモテないモテないと嘆いているけど、それは乙女心を理解できていないからだよ相棒、と肩を叩いてやりたくなる。

しばらく見つめあった後―――二人して、同時に首を傾げた。



「「やっぱり、ない(わ・や)」」



同時に同じ言葉が口から飛び出す。一瞬二人してキョトンとしたが、すぐにまた笑いがこぼれてきた。ああ、うん、やっぱり私たちはこうだよね。相棒という、誰にも取って代われない―――唯一無二の、存在なんだ。





*END*

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30万hit記念、暁希さんからのリクで、
『ポタ連載のifで、夢主→ロンで切なめ』でした!

ifっつってんのに夢オチかよ!!
というツッコミが聞こえてきそうですが、
これしか思い付かなかったんです許して下さい。
ロンに限らず、もし夢主が誰かを好きになると、
こんな感じでめんどくさいことになるんだろうなあ、
ということがハッキリ分かりましたw

暁希さん、リクエストありがとうございました!
これからもかしわもちをよろしくお願いします!


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