無理だと思うなら諦めればいいのに。
思うけれど、今までろくに口もきいたことがなかったくせに陰から想い続けていた自分が言えることでもない。

「きっと叶わない」と行動出来ずにいるのはカカシと同じ。
ただ、相手を大事に思って行動に出れずにいるカカシに比べ、自分は狡智に長けタイミングを計らっているところが大きく違う。

報われない想いを抱える人間なんて、多くは必要ないのに。










けれど、数ヶ月後、夜の通りで見かけた。

銀色の髪をもつ彼と一緒に居る、金色の髪をした男の子。
抱き合っていたかと思うと顔をあげて嬉しそうに笑い合って、カカシは見たこともない優しい目をしていた。


──そうか。

(うまくいったんだ)

『きっと無理だけどね』

(でも、行動に出たんですね……。先輩)

負け戦だと覚悟しても。
そう思うとやっぱりかっこよくて、惜しいなぁと悔しくなるが、
一緒に居る男の子はただ真っ直ぐにカカシを見つめ、笑って……テクニックなんて全くもっていそうになかった。
素のままといった感じ。
やっぱり、その時点で負けていたのかもしれない。

「本当は、好きだったんですよ……。カカシ先輩」

だけど、こんなにも幸せそうな顔を見せられたら、やっぱり叶わない恋だったと認めるしかない。
同時に、こんなにも幸せそうなあなたの顔が見れるなら、

「……うまくいって良かったですね」

小さく呟いた声はカカシにはきっと届かないが、当たり障りない言葉でも、今度はちゃんと本心からのもの。

──負け戦もたまには悪くない、と。













END(20100512)





前へ 次へ
戻る3/3




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -