「カカシ先輩、やけに機嫌いいですね」

数日後、飲み屋のカウンターの席でヤマトが怪訝な顔をして言ってきた。

「……そう?」

「良いことあったんですか?なんか、優しすぎて気持ち悪いというか……」

「奢ってくれるなんて初じゃないですか」
と言うヤマトの言い分は、言われてみたら確かにそうかもしれないが、けどまあ、ナルトとのことを考えればおおらかにもなるというものだ。
愛する子に愛されて、エッチも出来て、身体の相性までいいという順風満帆ぶり。
不満なんて一つもない。

何気に窓の外を見ていると、その向かいにカカシを幸せにしてくれている当の本人が通りを歩いているのが見えてカカシは
「ちょっと悪い」とヤマトに一言言って表に出た。

「ナルト」

呼び止めれば、少し肩を揺らしてこちらを振り向く。

「今帰り?」

「カカシ先生」

愛しくて可愛い恋人。
その隣にはシカマルもいるので、少し邪魔だな……と内心思いつつ、「よ」と目を細めた。
一方、見返すシカマルはカカシに「どうも……」と呟いたが、その眼はカカシを胡散臭いと言わんばかりのもので。

(……。俺、シカマルに何かしたっけ)

表情は崩さずにいながら少しだけ時間が止まる。
以前アスマの敵討ちの時には付き合ってやったのだから、感謝こそされて良さそうなものを。
カカシがチラリとナルトに視線を戻せば、カカシと目が合ったナルトは嬉しそうにはにかんだ。

(……)

連れて帰ろう。

その結論に達したのは、はにかんだナルトが可愛かったのと、物言いたげなシカマルの視線が気に食わなかったせい。

シカマルの視線がどういう意味合いからきているのか分からないカカシからすれば仕方のないことだが、

「ナルト、ちょいこっち。……シカマルはまた今度ね」

と微笑んだカカシにシカマルが内心憤慨したのもまた仕方のない話だ。


しかし、今回誰より可哀想だったのは、戻らぬカカシの帰りを待ち続け、最終的に全額自腹をきったヤマトだろう。
「もう誰も信じない」
と小さく呟いたヤマトの台詞に、飲み屋の店主は哀れな眼差しを向けずにはいられなかったという。













END(20100619)






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