そんな両親の声を詳細までは聞こえなくとも、二階の子供部屋に居るナルトはぼそぼそと聞き取っていた。 ベッドで布団に包まり、顔まで覆い尽くす勢いで毛布を被るナルトは、クシナが言った『熱を出している』如く、ぽっぽと頬を桃色に染め上げている。 あの後、青年に血を吸われたわけではない。 もし吸われていたら、それこそ顔色はむしろ青白くなっているはずだ。 横向きに毛布に包まっているナルトは、眉尻を下げて小さく呟いた。 「きゅうけつきって、血ぃ吸うんじゃなかったんだってばよ……」 『ねぇ。でも……本当に吸血鬼だったら、どうする?』 あの直後、ちゅ、とナルトが吸われたのは唇だった。 反応出来なかったナルトは、しばしぽかんとして、その後で頬を桃色に染め上げた。 キスは、母親や父親にしょっちゅうされているが、唇にされたことはない。 嫌じゃなかったけれど、何故だろうか。とても恥ずかしくなってしまった。 同時に、見上げて、青年の端正な顔でにこりと微笑まれ、ナルトの心臓はまたどっきゅんと跳ねた。 それから、何を話したか覚えていない。少しして解放して貰い、ナルトは逃げるように走って家に帰って来ていた。 思い出して、うう……と布団の中で唸り、顔をしかめる。 唇を軽く吸われ、パニック状態となったナルトに、青年はこう言っていた。 『お母さんの言うように、知らない人にはついて行かない方がいいよ?危ないし、どんなおかしなやつが居るか分からないから』 そして、こんな風に続けた。 『俺の名前は、カカシ。これでもう知らない人じゃないね?――また遊びにおいで、ナルト』 (……また、おしるこくれるかな) 母親にも父親にも言えないが、ナルトは吸血鬼、ならぬ、吸唇男に、また会いに行きたいと、思ってしまっている現在なのである。 FIN(20131019) 前へ 次へ戻る5/5 |