「……は、はぁっ、はっ……」 酸欠と混乱で涙目になったナルトが膝をカクカクと笑わせ、肩を上下しているのを見て、影分身のカカシは掴んでいたナルトの手をやっと解放する。 その反動でナルトは目の前のカカシの方に倒れ込み、しがみついた。 カカシは抱き留めるようにナルトの身体に腕を回す。 頭が朦朧として、はぁはぁと喘ぐナルトの頭上から、カカシが言った。 「……ま、キスってこういうのもあるわけだけど、お前はこの手のキスってどう?」 「……、意味が、分かんねぇ」 今みたいなキスというのは、したことがなければ見たこともない。 良いも悪いもどうもこうもなく、何だ今のは、といった感じだ。 ゼェハァと肩を上下させてカカシの顔を睨めば、カカシは「大人向けだからな」と肩を竦めた。 「けど、俺は実際に大人だから、直接唇を合わせたら今みたいなこともしたくなるんだよ。だから……ね」 お前がしたいと思うまではよしておいた方がいいんじゃない? そう言って、下ろしていた口布を元の鼻の上まで戻したカカシを見て、ナルトはやっとその意味と、口布をしたままキスをしたカカシの意図を理解した。……気がした。 この件を機に、ナルトはますますカカシという人が分からなくなったが、一つ分かったことはいつも飄々淡々としているカカシが唐突に起こす行動は、とてつもなくサドっ気があるということだ。 ナルトの首ねっこを掴んで部屋に連れ戻したり、顎を掴んでキスしたり。 手を掴まれて動きを封じられるわ、股の間に膝を突っ込まれるわ、傍若無人にもほどがある。 俺ってば犬や猫じゃねーんだぞ!と後日に文句を言った時には、犬や猫にわざわざキスはしないでしょ?ときたもんだ。 「カカシ先生って本当に俺のこと好きなのか?」 怒り呆れて訊けば、 「どうだろうねぇ」 とカカシが柔和に浮かべる微笑みの、かっこよさと、危うさ。 キスの日以降、ナルトは新しく知ったカカシの裏の顔に警戒心と恋心を募らせて大変だったが、後日、カカシに「ナルト、エッチの日ってないの?」と余裕たっぷりに訊かれた時は、保身の為に「ねえってば!」と即答したのだった。 ……キスですらあんな具合なら、エッチなんてした日には、とんでもないことをされそうだ。 END(20130608) 加筆修正(20131022) 前へ 次へ戻る5/5 |