「カカシ先生は……俺と、キスしてぇとか思わねぇの?おっ俺は、してぇってばよ。先生と、もっとちゃんと、色々……」

「……」

次第に声を小さくし、口ごもるようにして言ったナルトに、カカシが沈黙する。
ナルトの羞恥は最高潮に達していた。
恥ずかしさのあまり、何故、年下でこれといった恋愛経験もない自分がここまで身を粉にして言わねばならないのかと腹さえ立ってくる。
だが、ここまできたら、ままだ。
経験値なんててんでないし、慣れているかもしれないカカシに下手に迫って火傷するわけにもいかない為、ナルトは目を瞑り、顎を上げてカカシからのキスを待った。
いつでも来いというスタンバイ状態だ。
ここまでしてもカカシが何もしてくれないならオサラバするしかない、と待ち構えていると、三秒ほどして、唇にちょんと柔らかい感触が触れた。

「!」

歓喜し、目を開けたナルトは、その笑みをすぐに消した。
至近距離で目が合ったカカシは確かにナルトにキスしていたが、その鼻から下は未だばっちり、口布に覆われたままだったからだ。
ナルトへのキスも口布越しのそれである。
こらえていた羞恥が怒りと共に吹き出て、「……ねーってばよ」とナルトは低くこぼして立ち上がった。

「そんなん、ねーってばよ!聞いたことねーよ!何で恋人とのキスにそのマスクつけたままなんだってばよ!!俺とはキスもしたくねぇってことか!?」

マスクを指差し、激昂して叫べば、言われたカカシが目線を外し、ハァと溜め息をついて頚の後ろを掻く。そのリアクションたるや、面倒臭そうなものだ。
それを見てナルトは余計に発奮した。

「……別れる!!ああ、もういいってばよ、カカシ先生はそうやってずっとマスクしたまま一人で生きていきゃいいよ!!付き合ってられっかよ!」

踵を返し、玄関に向かう。
勢いのままドアを開けようとすると、その勢いで障害にぶつかり、ナルトは「へぶっ!」と間抜けな声をあげた。
打った鼻を手で押さえて見上げれば、ナルトがぶつかった相手――カカシがやれやれと言いたげな顔で見下ろしている。

そのまま猫のように……愛が足りないんじゃないかというやり方で首ねっこを掴まれ、部屋に連れ戻されて、何だかんだと吠えかかったナルトは、戻った部屋に先程までと同じ、悠々とベッドに腰掛けているカカシの姿を見つけて、自分を掴んでいるカカシが影分身のカカシだと知った。
ベッドに腰掛けていたカカシがのそりと立ち上がり、影分身のカカシに首ねっこを掴まれたままのナルトは怯みながらも論じた。

「な……何だってばよ、何……は、離せってば!」

黙して喋らないオリジナルのカカシが一歩二歩と近付いて来ることで、妙に身の危険すら感じ、影分身のカカシに喚くが、影分身のカカシもまた、同じようにナルトの声に反応しない。
別れると言ったのが悪かったのだろうか。だが、さっきみたいな対応を取られれば、ナルトでなくたって激昂するはずだ。

「ちょっと、待っ……」

オリジナルのカカシがすぐ目の前、ナルトが顎を上げて見上げなければならない位置まで近付いて、部屋の電気の明かりをカカシの身体が遮り、視界に陰が差す。
思わず顔を背け、目をぎゅっと瞑ると、手荒く顎を掴まれた。

そして、ナルトは目を見開く。

平手打ちでも食らわせられるのだろうかと構えたナルトの頬に平手打ちは訪れず、唇に、カカシの唇が押し付けられたからだ。
驚いて見ればカカシは口布を下ろしており、触れている唇は布を挟んだものではない、直接のキスである。
その証拠に、ナルトと目を合わせながらも顔を傾けたカカシに深く重ねられた唇は、湿った感じがした。

「ん」

突然のことに驚き、狼狽えたナルトはカカシから離れようとしたが、真後ろに居る影分身のカカシが、オリジナルのカカシを押し返そうとしたナルトの手を掴み、それを封じた。
顎を掴まれていることもあり、苦しくなって口を僅かに開ければ、そこから滑り込んだカカシの舌がナルトの口腔を我が物顔で犯す。
竦み上がって引っ込んだナルトの舌に触れ、絡めるように吸い付いた。

「ん、ぷ……」

目を白黒させたナルトは溺れかけた者のように息継ぎに苦しみ、足腰に力が入らなくてカカシにしがみつきたいほどだったが、ナルトの手を掴んでいる影分身のカカシがそれを許さなかった。
代わりに、ナルトが今にもへたこりこみそうになっていることに気付いたオリジナルのカカシが自分の膝をナルトの股の間に捩込み、腰に腕を回した。
そうしながら濃厚過ぎるキスは続けられ、ナルトの唇に執拗に吸い付いていたカカシは歯列までなぞって唇を離し、掴んでいた顎も離した。








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