自来也と修業に出る前といったら二、三年前だ。
ナルトはまだ今より全然幼く、十二、十三歳といったところだろう。

「…………」

「あの…、そんなにヒかないでくれる?だからお前に手を出したりとかはしなかっただろ?」

「そう、だけど…」

けど、驚くなという方が無理だ。

カカシは全然そんなそぶりは見せなかった。里を出る前も、帰ってきた後も。

「お前を大事に思ってたから、何もしなかったんだよ。悟らせないようにしてた。…なのに、修業先で他のやつに簡単にキスさせたり触らせたりしてたとはね…」

「う…」

未だア然としていたナルトだが、恨みがましく言うカカシに、何だか知らないけどゴメンという気持ちになる。

「だ、だって、エロ仙人が修業の一環だっつーから」

とりあえず言い訳すると、カカシは「自来也様を恨むよ」と言って、離した距離を縮め、顔を近づけてきた。

「え、ちょ、カカシ先」

「いいから。とりあえず一回キスさせて。このままじゃ俺が浮かばれないから」

「――…」

浮かばれないって、別に死ぬわけでもねーだろ。
言おうとしたナルトの言葉は、ゆっくりと押し付けられたカカシの唇によって飲み込むしかなかった。

ついでに、カカシの一回は驚く程長くて更に濃厚で。

今までした誰のキスよりも断トツに上手かった、というのは、まあ誰にも言えない話なのだが。


「…は」

「――で、正確にはお前何人とキスしたの?」

長いキスの後、漸く唇を離したカカシにそう聞かれ、ナルトはぼんやりする頭で目の前の色違いの瞳を見つめた。

やっぱりすごくかっこよくて、こんなかっこいい人他に見たことないよな、とぼーっと見惚れていると「聞いてる?」とカカシが眉を寄せる。

「え…、何が?」

「だから、何人とキスしたのかって聞いてんの」

(何人…)

ナルトはとりあえずキスしたことがある相手の顔を何人か思い浮かべてみるが、中には思い出せない相手もいて、結局

「そんなのいちいち覚えてねーってば」と返した。

「…ほ〜、覚えきれない程したわけ?」

「っつーか、別に変化してる時だけじゃなくて、エロ仙人に連れてかれた飲み屋の姉ちゃんとかとも普通に何回かした、し…」

(あ、やべ…)

思った時には、既に遅く。

「女の子ともしたんだ?」

案の定、目の前のカカシは再び恐い目になっている。

「あ、いや、だって迫られて、何となく…」

「…ヤった?」

「え」

「エッチしたの?」

「そ、それは、してない…」

何だか、別にカカシと付き合っているわけでもないのに、浮気を問い詰められているような状況だ。
ブンブンと首を横に振ると、カカシはため息をついて眉を寄せた。

「でもキスはしたわけね…。は〜…、お前がこんなに軽いやつだったとは…」

「……」









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