「カッ、カカシ先生!なんだってばよ!?下ろせってば!」

「今下ろすよ。…ナルト、鍵は?」

突然のことにパニクっていたナルトだが、言われてハッと気づけば、そこは早くもナルトの自宅の玄関前だった。

「ポスト…」

ナルトの言葉に、カカシは器用にもナルトを抱き抱えたまま、もう片方の手でポストから鍵を取り出しガチャガチャとドアを開ける。

家の中に入ると、ようやく「ハイ」と身体を下ろされた。
やっと地に足が着き、ホッとする。

「カカシ先生、なに」

「風呂入ってきて」

見上げて言おうとした瞬間、威圧的に見下ろされて目を丸くした。

「え、風呂ってなんで?」

「………」

険しい顔のカカシの様子に、何か変な匂いでもするのかとクン、と自分の身体の匂いを嗅ぐと。

(うぇ…)

どことなく先程の小肥り中年男の匂いがした。
そういえば首を舐められたし、あちこちベタベタと触られたのを思い出す。
これは流石に自分でも嫌だ。

「は、入ってくるってば」

替えのTシャツとズボンを掴み、バタバタと風呂場に向かい、男に触られたところをナルトは念入りにゴシゴシと洗った。

「………」

けれど、ふとひっかかることが一つ。

(…なんでカカシ先生がそんなこと気にするんだ?)

確かにナルトとしては助かったけれど、それは報告書をサクラたちに出させて先に切り上げるほどのものではない。

(……?)

「ま、いっか」

泡の残った身体にジャーッと、シャワーをかけてナルトは風呂から上がった。

服を着て、濡れた髪をゴシゴシとタオルで擦りながら部屋に戻るとカカシがまだ居た。
いつもの本を読んでいたらしいカカシはナルトの姿を捉えると、パタンと本を閉じ立ち上がる。

「ちゃんと洗った?」

「へ?あ、うん…」

「…そ、」

「?」

言うなり近寄ってきたカカシに、ナルトはいきなりグイッと手をひかれたかと思うと、その腕の中に再び抱きすくめられた。

「えっ」

この日、二度目の抱擁。

一瞬何が起こったのかわからなくて、それに反応できなかったナルトは一拍おいてカッと顔を熱くした。
顔を埋めさせられた肩口には、カカシの匂い。勿論先程の男のように不快なものではないが…。

「わ、ちょ」

「……」

驚き、バタバタと抵抗するが、お構いなしな様子でカカシはナルトの首筋に顔を埋め、クン、と鼻をならす。

「カ、カカシ先生?」

(なんだってばよ…?)

流石に恥ずかしい。
身体をひこうとするが腰にカカシが腕を回している為、それもできなくて困ったナルトは眉を下げた。

すると、少し時間をおいてカカシがナルトの首筋から顔を上げる。

「…もう大丈夫みたいだな」
「大丈夫って…」

なんだってばよ、と言おうとした。
だが、言葉が出てこなかった。
至近距離で目が合った、未だ着物姿で素顔を晒したままのカカシは、やっぱり息を呑むほどかっこよくて、同じ男として嫉妬する程ほど。
今ナルトの腰に回されている腕も、その胸板も綺麗なのに逞しくて、どこか男の色気を感じさせられる。









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