「えっ?あれ…、なんで!?」

ナルトが変態中年オヤジから密書の在りかを聞き出してから、カカシが現れるまで数十秒しか経ってない。
密書を取りに行く時間などなかったはずだ。
驚くナルトにカカシは事もなげに言う。

「ま…、影分身に捜させてたからね」

「えっ!…じゃあ、俺ってばあんなに頑張ったのにカカシ先生見てなかったのかよ!?」

「見てたよ。だから影分身に行かせたの」

「??」

よくわからない。
すると、カカシはハァ…とため息をついた。

「普通、色任務は相手を自分のペースに引き込んで情報を引き出すものなのに、お前ときたら相手のペースにのまれてされたい放題じゃないの。ほっとけば何されるかわかったもんじゃないでしょ」

案の定変なもの舐めさせられそうになってるし、と愚痴るように言われ、ナルトは「うぐ」と眉を寄せる。

「え、でも鍵は!?」

「雷切で鍵ごと壊したよ」

「……」

(……なんだ…)

せっかくカカシに認めてもらおうと思って頑張ったのに。

「じゃあ…、俺のしたことって意味なかったんだな…」

ガックリと肩を落とすと、カカシの手がポンと頭に触れた。

「そうは言ってないだろ。お前が頑張ったから密書もその間に探せたし、気を失わせるのも楽だったんだから」

「……」

「さ、早いとこ出るぞ。サクラたちが待ってる」

「うん…、あ、でもこのオッサンは?」

ナルトが未だ白目を向いて下半身丸出しで倒れている男を見下ろすと、

「…このままでいいでしょ。下手したら国同士の揉め事にならないとも言えないし。報告だけして後は綱手様の判断に任せるよ」

とカカシが言って、その後続けられた、本当は殺してやりたいぐらいだけどね、という低く放たれた言葉はナルトにはよく聞こえなかった。

「え?」

「…何でもない。行くぞ」

「あ、おう」


そうして、とりあえず任務完了ということで、二人してサクラたちのところに戻ったのだった。





「おかえり!二人とも大丈夫だった!?」

戻ると、少し心配そうな顔をして待機していたサクラが言った。
次いで、カカシの少し後ろにいるナルトを見てふと疑問そうな顔になる。

「…あれ?ナルト、あんたなんで術解いてんのよ?もしかして、密書…」

お色気の術を解いているナルトに密書奪還が失敗したと思ったらしいサクラは、

「サクラ、ちゃんとあるから」

フォローするようにカカシが言うと、なーんだ、とホッとした表情を見せた。

「………」

だが、結局カカシを心配させたあげく密書もカカシに探させてしまったナルトは、流石に行く時のような勢いでは笑えなくて。

「ナルト、なに浮かない顔してるのよ?成功したんでしょ?やったじゃない」

「あ、う…」

サクラに言われ、うん、と慌てて笑顔を作ろうとした時。

「ハイ、サクラ」

ナルトの前をヒュッと何かが横切った。

「えっ?」

カカシが投げてよこしたそれを、サクラは戸惑いつつキャッチする。

「?」

キョトンとするサクラの手元をナルトが一緒になって覗きこめば、それは先程お偉方の元から苦労して取り戻した密書だった。

(…?なんで…)

サクラと共にハテナマークいっぱいでカカシを見ると、スタスタとナルトたちの方に歩いてくる。

「カカシ先――、…!?」

先生、と続けようとしたナルトの言葉は、ぐるりと回る視界に続けることができなかった。

「じゃ、報告よろしく」

そう言うカカシの肩にナルトは担ぎ上げられていて、「は?」とア然としたように言うサクラの顔も角度的に見ることができない。

「な、ちょ、カカシ先生!」

声を上げるナルトに構わず、カカシが瞬身を使い、ナルトは次の瞬間その場から姿を消していた。









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