「そうですね。とても立派な方ですし、是非ご一緒したいわ」 できる限りの笑みを浮かべてナルトが言うと、男はいやらしく口元を緩めてカカシを見た。 「…だそうだ。お前の妻は随分好きものだなあ」 (お前が言うなってばよ…) でっぷりとした男の様子には吐き気すら催す。 それでもナルトが堪えているのは、成長した姿をカカシに認められたいからだ。 「わかったら出て行け。それとも自分の妻が他の男に抱かれるところを見たいか?」 「……」 だが、男を見るカカシの目は既に殺気が交じっており、見る人が見れば一瞬で只者ではないとわかってしまう程になっていて。 (カ、カカシ先生ってばそんなとこまでリアルに演技しなくってもいいってばよ!) 焦ったナルトが“大丈夫だ”と目だけで合図を送ると、カカシは苛立ったようにナルトから目を背け、部屋を後にした。 「………」 そんな様子をナルトが呆然として見送っていると、後ろに回った男の手がナルトの胸をムニュッと揉んだ。 「!!」 瞬間、再びゾワワワッと立つ鳥肌。 (こんの、エロジジイが!) なんてことは勿論言えるはずもなく、その手をさりげなく外しながらナルトは精一杯の笑顔を浮かべる。 「…あの、少し耳にしたんですけど」 「なんだ?」 「火の国の密書が、盗まれたって話を聞いたことあります?」 その言葉に、男はピクリと動きを止めた。 (ヤベエ、直接的過ぎたか…?) 案の定、男の声は低くなり、その口調は訝しむようなものに変わった。 「…知らぬ。何故そんな話を?」 「あ、いえ…、私、生まれは火の国でして。すごくその密書に興味があって探していて。…実は、旅を続けてるのもその為なんです」 「………」 これで疑われたら、もうダメだ。 言い訳なんて思いつかない。 今でさえ、ナルトにはもういっぱいいっぱいで。 だが、男はそれをアッサリ信じたらしい。 「ほう…、それを見つけてどうするんだ?」と訊いてきた。 (どうって…) 実際のところ万々歳だ。 それを持って帰れば、ナルトたちの任務は終了する。 だが、行商人という役を被っているナルトにとってはどう答えたら正解なのかわからなかった。 「…どうでしょう。ただ、一目見てみたいだけなので、実際見てみないとわからないです」 「……」 苦しい言い訳に俯く。 やはり、自分にはこーゆう頭を使う任務は向いていないのかもしれない。 そう思った時、男が言った。 「…ワシが持っていると言ったらどうする?」 (……やった!!) その言葉にナルトの気持ちは一気に浮上した。 どうやら迷った末に返した言葉は意外に正解だったらしい。 高ぶる気持ちを落ち着け、どうにか口を開く。 「もしそうなら、何でも言うことをききます。所詮例え話でしょうけど」 「本当か?」 その言葉に、男はナルトに向き直ってガシッと肩を掴んできた。 「な、何がですか?」 「何でも言うことをきくと言ったな」 「……」 鼻息を荒くする男に、ナルトは内心もうドン引き状態だ。 「…はい。でも、それはあなたが密書を持っていたらの話です」 「――持っている」 男が怖いくらい真剣な表情で言って、ナルトは目を見開いた。 前へ 次へ戻る5/12 |