(やった!)

思っていたよりスンナリ入れた。
素直に喜ぶナルトがカカシを見ると、カカシは何やら複雑そうな表情でナルトを見る。

「?…どうかしたの?」

今は任務中だ。
忘れずにちゃんと女言葉で言うと、カカシはますます眉をひそめた。

「お前…」

(……??)

「いや…、いい。行こう」

何か言おうと開かれた口は閉じられて、カカシが先を歩き出し、ナルトはわけがわからないままそれについて行った。


「旦那様、お連れ致しました」

家の者に連れられてたどり着いた襖の向こうのその部屋は、流石、立派なものだった。

新しく質のいい畳の匂いのする部屋に、豪華な彫り物や、値打ちのしそうな墨画などが壁にかけてあったりして、こんな部屋で戦闘などをしてしまった日には、ナルトの給料ではとても返せないだろう。

改めて隠密だと自分に言い聞かせて、部屋の奥。
高そうな肘置き付きの座椅子にゆったりと腰かけている油切った小肥りの中年の男の姿が目に入った。
どうやら彼がそのお偉方らしい。

「そなたらが旅の行商人か…」

(……)

“そなたら”と言いながら、男はナルトだけをいやらしい目で見た。
さっきの門番と同じだ。
この姿はよっぽど男を惹き付けるらしい。

「娘、近こう寄れ。品物を見せてみろ」

「…はい」

ナルトは言われるがまま、男の傍に寄った。
ここまでは作戦通りだ。

カカシから品物を受け取って、男の傍にひざまずき、風呂敷を開く。
すると、中からコロコロとよくわからないガラクタの数々が出てきた。

「これが、波の国の特産品で…。こちらが――」

「…ほう」

デタラメを並べ、ガラクタを手に取って男の前にかざすと、男はガラクタではなくナルトの手をとった。

(げ)

慌てて顔を上げると、男はナルトの太ももに手を這わせて顔を寄せる。

「娘。お主、本当に美しいな…。どうだ、ワシのもんにならんか?んん?」

「……」

どうしようか躊躇っていると、

「…お言葉ですが」

後ろからカカシの低い声がした。

「そいつは私の妻です。そういったことは勘弁してもらえませんか?」

(えっ!!)

その言葉に驚いたのは、ナルトの方だ。
まだ、密書のことも何も聞き出せていない。
今、そんなことを言えば…

カカシらしくない、と慌てて振り向くと、今まで見たこともないほど怖い目をしたカカシが目に入った。

(カカシ先生…?)

ア然としたナルトがカカシに呆気にとられていると、グイと男に腕を引かれた。
「…わっ!」

受け身もとれず、ボスッと男の方に倒れれば、それをいいことに男はナルトの肩に手を回してくる。

「夫婦だから何だと言うのだ。可愛いがってやるだけだ、何の問題もなかろう?」
「……っ!」

言いながら男はナルトの首筋を舐め上げてきて、そのネットリとした舌の感触にナルトはゾゾゾ、と鳥肌を立たせた。

だが、ナルトだってもう守られるばかりの子供ではないのだ。
こんなことくらいでいちいち音を上げるわけにはいかない。









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