「いいか?黙って聞けよ。設定はこうだ」

目的地が近づくと、カカシがナルトに顔を寄せて言った。

「俺がお前の旦那で、夫婦で行商人として各地を旅してる。それで――」

「だっ…」

“旦那ぁ!?”と思わず声を上げそうになったナルトの口を、カカシが手で覆った。

「黙って聞けって言ってるでしょ」

「……」

コクコクと首を縦に振ると、カカシは手を離す。

「…それで、商売のフリしてお偉方のとこ訪ねれば、ま、間違いなく家に引き入れる。今のお前を見ればね」

「はぁ…。だからって、夫婦ってのはちっと無理があるんじゃねーか?」

「各地を旅してる行商人が友人同士の方がよっぽどおかしいでしょ」

そんなことを言い合っていると、それまで黙って見ていたサクラが口を挟んだ。

「それはいいですけど、カカシ先生のその格好はマズイんじゃないですか?」

「ん?」

言われて見てみれば、カカシはいつもの忍服のままだ。
額宛てに、覆面のような口布、手を覆っている手甲。

どう見ても明らかに一般人の姿ではない。

「わかってるよ」

カカシはそう言うと「ちょっと待ってて」と通りがかりの茶屋に入って行ってしまった。

(…??)

よくわからないまま、サクラやサイと三人で待たされる。

そうして、数分後

「悪い。お待たせ」と言って出てきた男に、ナルトは目を見開いた。
ナルトだけじゃない。サクラもサイもだ。

「カ…、カカシ先生?」

ナルトが指を指して言えば「?そうだけど…」と首を傾げるカカシらしき男。

額宛てを始め、口布もない。
木綿の着物を着ており、素顔を完全に曝しているその顔の造りは、驚くほど端正だ。

「カカシ先生も、変化したのか?」

「まさか。俺はお前ほどチャクラを持ってないからな、余計なとこでは使えないよ。温存しとかないと」

「………」

変化じゃない。ということは、当然自前ということになる。

(カカシ先生ってば、こんなかっこよかったのか…?)

言われて見てみれば、確かにカカシの左目にはいつも通り縦に裂けるような傷痕があった。
これは決定的で。

「スゴイ!ナルトと並んだら美男美女ね〜」とサクラが頬を染めるのを、

(俺は男だってばよ…)

とナルトは悔しい気持ちで聞いた。



そんなこんなで目的地に到着する手前。

「じゃあサクラとサイは此処で待機ね。何かあったら知らせる。…行くぞ、ナルト」

カカシがテキパキと指示を出し、サクラたちと分かれた。


着いたお偉方の邸宅は、入口前、門番のような男達が闊歩しており、何やら物々しい雰囲気だった。

その様子に、ナルトは内心“げ〜面倒臭そうだってばよ”と舌を出す。

「何奴。名を名乗れ」

案の定、入口に近づいただけでゴツイ男に止められた。

「我々は旅の行商をしてるものです。もしよろしかったら、と思いまして」

それに対し、いつもの少し気だるげな雰囲気はどこへやら、カカシはにこやかに言ってのける。
だが、門番はカカシの話を聞いているのかいないのか、ナルトばかりを見つめてきた。

「……」

勿論ナルトとしては、男にそんな熱い眼差しを送られても嬉しいわけがない。

だが、

(これは任務…、任務なんだってばよ)

自分に言い聞かせ、ナルトはニッコリと笑みを浮かべた。

「何か?」

微笑んで言えば、門番はハッと我に返ったようにしてナルトから目を逸らした。

「いや、いい。入れ」









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