「それってどんな人だってばよ?」

「…なに、やけに興味持つね。俺に好きな相手がいることがそんなに意外?」

少し困ったように銀髪を掻くカカシには悪いが、ハッキリ言って超意外でナルトは正直に「うん」と首を振る。

「で、どんな人なんだよ?」

「……そうだな…。強くて、綺麗な人だよ」

「………、へー…」

そんなカカシの言葉に、やっと、そんな相手が本当にいるんだ、と実感が湧いた。

何だかほんの少し胸にポッカリ穴が開いたような気分だ。
淋しい、というか。

先生や上司としてのカカシは、今までナルトやサクラのことを「可愛くて大事な部下だ」とずっと傍にいてくれたけれど、本当に大事な人は別にいるのだと思い知らされたからなのかもしれない。

「つ、付き合ってんの?」

歩き出したカカシの背中に問いかければ「…いや」とカカシは短く答える。

「なんで?」

眉をひそめて言った後で、ハッと気づく事実。
カカシが若い頃はよく大戦などがあって、多くの人が亡くなったと聞いた。

相手の人が亡くなっているなら、付き合えるはずもないのだ。

言葉を失い、足を止めたナルトに気づいたカカシが振り向き、呆れ顔で言った。

「……いや、ちゃんと生きてるから」

…すごい以心伝心だ。
思うナルトだが、それはそれだけ思っていることが顔に出てるからだということに本人は気づいていない。

「じゃあなんで付き合ってないんだよ?相手の人、恋人がいんの?」

「いないよ、俺の知ってる限りでは」

「…じゃあなんで!?」

何だろう。なんか、煮え切らないカカシの態度にだんだん苛々してきた。

カカシもそれに気づいたらしく、なーにを苛々してんだか、という目をナルトに向ける。

「俺はね、本人に言う気はないのよ」

「えっ」

「困らせたくないしね、傍で見てるだけでいいんだよ」

目を細めてカカシは言うが、ナルトにはカカシの言葉が全く持って理解できない。
これがカカシが今まで恋愛してきた中で辿り着いた結論だとすれば、淋しすぎる。

「何でだってばよ?相手の人、カカシ先生が好きだって言ったら困んの?」

「…ああ、多分ね」

「きっ、禁断愛ってヤツ?」

「んー…。ま、そうとも言うかな…」

恐るべき大人の世界。
だが、何故かナルトはここに来て俄然カカシの恋を応援したくなっていた。

「カカシ先生、ちょっと、よく話し合おうってばよ!」

「は?」

「いいから、よく考えた方がいいってば!」

何よ、と眉を寄せるカカシの腕をグイグイと引っ張り歩き出し、自分の家に向かう。
こんなの立ち話で済ませていい話じゃない。



「――だから、諦めるにはまだ早過ぎると思うんだってばよ!!」

自宅に着いて、ナルトはカカシをベッドの上に座らせて再び力説していた。

「いや…、あのね…」

「禁断愛上等だってばよ!大事なのはそんなことじゃないってカカシ先生もさっき言ってたじゃんか!それにさ、もしかしたら相手の人もカカシ先生のこと案外好きかもしんねーだろ!?」

困り顔のカカシを遮り、尚も熱いトークを繰り広げる。
情にもろく感情移入しやすい性格が、今もろに表面に出ている。









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