「だっ、だからってカカシ先生には関係ねーだろ!?邪魔すんなってばよ!!」

「いや〜、可愛い部下が危険に晒されるの黙って見てられないしね」

カカシがここで言う“可愛い部下”とはサクラのことで、“危険”とはナルトのことらしい。
一応俺も可愛い部下のはずなのに、とナルトはカカシを睨みつける。

「大体、勘違いするなよ。あーゆうコトはさ、好きな相手としてこそ意味があるもんなの。誰彼構わずやっていいわけないでしょ」

「…、なんか、カカシ先生の口からそういう言葉が出てくるとは思わなかったってば」

半ば吐き捨てるように言えば「は?」とカカシは眉を寄せた。

「好きな相手〜、なんてさ!カカシ先生には似合わねー言葉だってばよ」

「……」

(…ぉ)

思いがけず、ナルトの言葉が引っかかったのか、カカシが眉間の皺を深くした。
少し言い過ぎたのかもしれない。

「…とにかくさ!俺ってばサクラちゃんのこと普通に好きだし、別に無理矢理とかする気全然ねーし、だから先生が心配することなんかねーってばよ!」

慌てて言ってのけて、ここらで退散した方がいいと踵を返すと、再びカカシの手がヌッと伸びた。

しかも、今度は襟首を掴むのではなく、力ずくで後ろから首に腕を回された。

「ぐあっ!ちょ、ちょっと」

逃げようと紺色のカカシの服を掻き毟るが、全然腕の力は緩まない。

そして「……撤回するか?」と耳元で低い声がした。

「てっ、撤回って何を!?」

力が強すぎて上手く呼吸もできず、ナルトはゼェハァと息を荒げながらカカシを振り向く。
目が合うのは、結構な至近距離にあるカカシの右眼。

「俺だって人間だし、人を好きになることくらいあるよ」

「……」

何だかよくわからないが、先程の言葉はカカシを傷つけたらしい。
真剣なカカシの表情に、売り言葉に買い言葉と言え、ひどいことを言ってしまったとナルトは素直に反省した。

「ご、ごめん、てば…」

「……」

神妙な面持ちで言えば、カカシは納得したらしい。
ナルトの首を締め付けていた腕を、するりと外す。

「…お前もさ、そんなムキになって誰かと関係を進めようなんてするなよ。本当に大事なのはそんなことじゃないんだから」

(……)

何か勘違いしていたのかもしれない、とナルトはそんなカカシを見て思った。

大人だとか経験値とか関係なく、カカシはカカシなりに恋愛してきて、きっとその結果今があるのだろうから。
大事なのは、確かにそんなことではないのだ。

「…カカシ先生、今も好きな人いんの?」

少しカカシに対するわだかまりがとけて、ナルトはカカシを見上げた。
今胸にあるのは、怒りとか苛つきではなくカカシに対する純粋な興味だ。

確かにカカシも人の子だから、普通に人を好きになったりするのだろうが、やっぱりあまり想像がつかなくて。
だが訊けば、カカシはあっさり「いるよ」と肯定した。

「そうなんだ…」

呆気にとられたように相槌を打つナルトだが、やっぱり想像がつかない。









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