「は…?」

事情を知らないヤマトが、どういうことですか?と眉をひそめる中。

(くっそー…!!!)

ナルトは顔を真っ赤にしながら悔しくて仕方なかった。
何がって勿論、そんなナルトをまだガキだな、と言わんばかりのカカシの態度がだ。
子供扱いだけならまだしも、ちょっと小バカにした感じさえある(被害妄想かもしれないが)。

ちょっとばかり大人だと思って。ちょっとばかり経験値があると思って。

(今に見てろってばよ…!)

赤い頬はそのままにギリギリと奥歯を噛み、カカシを睨んだナルトは、翌日早速行動に移した。


「サクラちゃん、今から俺とデートしねえ?」

次の日の任務はいつも通りサクラやサイと一緒だったので、任務が終わるなりナルトはサクラに声をかけた。

「デート?やーよ、あんたとなんか」

言葉通り少し嫌そうに答えるサクラは、そう言いつつもほんのり頬を染めている。

「まあまあ、そう言わずに。別に一楽じゃなくてもいいってばよ?サクラちゃんが行きたいならどこでも…、あ、何なら俺の家でも」

(その方が二人っきりになれるし…)

などと、いつになくサクラを口説こうとするナルトは、やはり若いだけに思考回路が単純というか。
つまり、カカシが色恋云々に経験値のないナルトをバカにするなら、その経験値を上げてやるという結論に辿り着いていた。

早い話が、昨日屋敷のテラスで見た男女のディープなキスをサクラ相手に実行に移そうという話。

「ちょっと、何よ」

「いーからいーから」

困惑を示すサクラの肩に手をやり、宥めすかして歩き出す。

(これで俺も大人の仲間入りだってばよ…!)

なんて、何ともお馬鹿なことを考えつつ、また一歩踏み出そうとした時だった。


「…ナールト、ちょっと待った」

後ろから、首ねっこをガッと掴まれ、ナルトは足を止めた。
というか止めざるを得なかった。

振り向いて目に入ったのは、言わずと知れた、上司のカカシの姿。

「な、なんだってばよ!」

もしや自分の考えを読まれたのでは、とカカシを警戒するナルトを見ずに、カカシはサクラに目をやる。

「サクラ、お前は帰っていいよ」

「え?はい。…?」

何だかよくわからない流れに難色を示しながらも、サクラが頷いて。

「ええっ!なんでだってばよ、今からデートしようと思ってたのに!」

とナルトは目を剥くが、

「ハイ、お疲れー」

にこやかに手を振るカカシによってサクラは帰って行った。

「サ、サクラちゃん…」

カカシに首ねっこを掴まれたまま、遠退いて行くサクラの後ろ姿にナルトはガックリ肩を落とす。

かなりの横暴である。
いくら上司だからって、輝く青少年の恋愛を邪魔する権利なんてないはずなのに。

「ひでえ!なんで邪魔すんだってばよ!」

思わず後ろにいるカカシを睨みつければ、カカシは涼しい顔で一言言った。

「お前、良からぬこと考えてたでしょ」

「………」

まさに、その通り。
言葉を返せずぎこちなくナルトが視線を逸らすと、その顔を覗き込んでくる。

「サクラ相手に、昨日見たようなキスとかそれ以上のコトしようと思ってただろ?」

…はい、思ってました。

とは心の中では言うものの、流石に口に出しては言えない。









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