■けもカカナル2
背後から近づいたものの、途中で、いつものやつをしようと思いつき、一度引っ込んで先回りする。
「あのォ〜すみません」
横道から顔を出したナルトに、男は目を丸くして足を止めた。
ナルトは、人間の女に化けていた。
齢の頃、十代後半から二十代。見目よくスタイルもいい美女だ。
ナルトの考察によると、人間の男は揃いも揃って色気のある美女に弱かった。逆に、女は見目よく爽やかな男に弱い。
男はどいつもこいつも鼻の下を伸ばし、女は目をハートマークにして骨抜きになる。
その後でナルトが変化を解くと、みんな一様に口をぽかんとさせたり、悲しがったり怒ったり。
ナルトはその様がおもしろくて、毎度腹を抱えて笑っては尻尾を巻いて逃げていた。
今回も然りか。
「道に迷ってしまって、ご一緒してもいいですか?」
上目使いでしゃなりしゃなりと寄って行って訊けば、男は「ああ、別にいいけど」と涼しい顔で答えた。
「この山の麓まで行くの?」
「そうなんです」
「なら、オレもだからちょうどいいね」
にこりと笑った男は、他の連中と違ってナルトの姿に鼻の下を伸ばす様子はなかった。
隣を歩きながら、どういうことだってばよ……とナルトは眉をひそめる。
好みのタイプじゃなかったのだろうか。
(いや……待てよ)
ひとしきり考えたのち、ナルトは更なる秘策を練った。
「あっ」
「……ん?」
「少し、足をくじいてしまったみたいで……」
あからさまにつまづいたふりをし、うずくまって、くるぶしを押さえる。
寄って来た男に――絵にすればウッフ〜ンと擬音がつきそうな様でこれみよがしに太腿までさらけ出すと、男は瞠目して軽く動きを止めた。
続く
ss 2014/07/08 23:25