夢  | ナノ


4位 総北1年生3人 五年後自宅でヤンデレる(妄想)


 ヤンデレなので、病んでます。
 苦手な方はご注意下さい。




 成人式が終わって、これから高校の同窓会をしようという計画が持ち上がっていた。地元の小中時代の同窓会にも心惹かれたけれど、会いたかった人たちとは会えたし、なにより高校時代の大好きだったあの三人と会えるかもしれない、そのことが重要だった。私も、踏み出さなきゃいけない。

 最初は、今泉君の外見に惹かれて自転車競技部の見学に行った。その後、鳴子君の明るさと根性に心打たれて、小野田君のひたむきさにノックアウトされた。毎日毎日応援に行っていたからか、名前も覚えてもらえて、うれしくて。でも、三人とも大好きだったから、三人とも欲しくなって、こんな自分おかしいと思いながらも、みんな好きで。だから、誰にも告白出来なかった。
 メアドすら聞けないまま、卒業した。
 直接会話することはなくなったけれど、大会を見に行っては陰から三人を応援していた。気づかれないように写真を撮って、大きく伸ばして壁に貼って。壁で笑う三人に頬摺りすると、なんとなく心が落ち着いた。逆に、キャピキャピうるさい女と喋っているのをみたりすると、耳元で蜂がブンブン唸っているような感覚がして、イライラして、壁で笑う三人を何度くしゃくしゃに丸めたことか。後で、くしゃくしゃにした三人をごめんなさいと泣きながら伸ばしてあげれば、三人とも私に笑いかけてくれた。
 私は、ちょっとおかしい。世間的に言う病んでいる状態だと気づいたのは、大学一年の冬。今泉君が珍しく楽しそうに女の子と大学から帰って、彼のアパートに入っていくところを見たからだ。彼も彼女も殺してやりたい、と思った自分が恐ろしくて、当たり前のように三人のアパートの所在を知っている自分はおかしいのだと気づいた。このままでは三人を傷つけてしまうと思った。最初は、ただ応援したかっただけなのに。なんで、私こんな風になっちゃったんだろう。
 自分のしていることに自信がなくなって、詩織に電話した。高校時代からの友人である詩織は学部は異なるものの小野田君と同じ大学に通っていて、時々小野田君の情報を私に教えてくれていた。少し会わない間に私があんな状態になっているとは思ってもいなかったらしい。当然だろうけど。
「いっつも集まるのうちばっかりで、呼んでくれないと思ったら…うわ、マジで小野田たちの写真まみれじゃん。気持ち悪ッ!…ホント、一途っていうか執念ていうか」
 気持ち悪いと言いながら、それでも詩織は私を抱きしめてくれた。少し許された気がして、ワンワン泣いた。
 その日、詩織は私と一緒に三人の写真や切り抜きまみれの部屋を片づけてくれて、一緒の布団で眠った後、次の日一緒に心療内科に付き添ってくれた。私に合った良い先生と出会えたのか、「傷つける前に気づけただけ、貴方は素晴らしいですよ」と微笑んでくれた先生と詩織のお陰で、三ヶ月もかからず、あの三人中心の生活から自分の生活に戻ることができた。今でも、月に一回の受診を続けている。
 私は、自転車に乗っている輝いた三人が好きだったんだ。キラキラ眩しくて、格好良くて。でも、それを自転車から降りたあとの彼らにまで引きずってしまっていたみたいだ。何故だか、彼らは私のものだと思っていた。まあ、その何故がわかるなら心療内科にまで通う羽目にはなっていなかったのだろうけど。
 今なら、三人に会っても、応援してるよ、自転車がんばって、と笑える。詩織も行くと言ってくれているし、同窓会に行こうと思う旨を先生に伝えたら、微妙な顔をしながらも、あまり長く接触はしない方が良いですよとのアドバイスをもらった。もちろん、そのつもりだった。うっかり長く喋って、以前の私に戻ってしまったら意味がない。彼らを傷つけてしまうかもしれないなんて、自分で自分が許せない。

 一度実家で着替えてから、詩織と落ち合って到着した同窓会会場は、すでにできあがっている人間が多かった。地元の同窓会に出席する人も多いのだろう、それでも百人近くの出席者が立食形式の会場で歓談していた。
 あまり酔っぱらっている状態の三人に話しかけても仕方がないので、詩織とともに会場を探すと、杉元と幹ちゃんを含めた五人で笑っているのを見つけた。詩織が、小野田君に話しかけてくれて、それをきっかけに鳴子君と今泉君も振り向いてくれる。久しぶりに会った三人は、少し大人になっていた。
「あ、久瀬さん。お久しぶりです。お元気でしたか?」
 少し身長が伸びた小野田君は、やっぱり童顔でスーツが馴染んでいない。でも、笑顔の暖かさは変わっていなかった。
「久瀬さんやないか。全然応援来てくれへんようになったから、ワイ捨てられたぁって傷心しとったんやで」
 鳴子君がおどけて、白い歯をみせながら私の肩を叩いた。鳴子君は相変わらず派手好きなのか、縦縞のスーツ姿で、でも似合っているのが彼らしい。
「また見に来いよ、久瀬」
 口の端だけ持ち上げる今泉君は、スーツが良く似合っていた。お世辞を言うタイプではない彼からの言葉が、嬉しかった。
 私のしていたことを知らないから、言ってくれているのだとは分かっていても。
「あのね、私大学忙しくて、これからは直接応援に行けそうもないんだけど。でも、三人のことは、ずっとずっと応援してるから。がんばって!」
 三人の笑顔が、一瞬だけ止まったような気がするのは、きっと私の願望なのだろう。
「いやだなー、久瀬さん。この杉元もロードに乗り続けているよ?」
「あはは、もちろん杉元君もがんばって」
 じゃあね、と手を振ってその場を後にした。

 やっと、三人にさよならできた気がする。
 横に並ぶ詩織も、笑顔だ。
 久しぶりに会った先生やクラスメートの近況も、色々あるようだけれど、充実しているようでなによりだ。
 同窓会で喋ったラグビー部の北村君は、見た目こそ筋骨隆々で厳つい人だったけれど、優しくて気の利く人で、今度食事しませんか、とはにかむ北村君の仕草は体格に似合わずかわいくて。喜んでと頷いたら、みるみる満面の笑顔になって、なんだか、いいなぁ、と思った。
 北村君とメアドを交換して別れる頃には、素面の参加者はほとんど帰宅していて、会場は酔っぱらいばかりになっていた。北村君と喋っている間にしこたま酔っぱらっていた詩織をどうやって連れて帰ろうと思案していると、杉元君がタクシーで幹ちゃんと乗り合わせて帰る予定だから、一緒にボクが送っていくよと名乗り出てくれた。詩織が帰るのも実家だし、送り狼をされることもないだろう。
 ごめんね、と杉元君に謝りながら詩織をお願いする。私も一緒にどうかと言われたけれど、私の実家は会場から歩いて三分もかからない。アルコールも入っていないし、歩いて帰ることにした。
 大学では、専攻するゼミを決めなくちゃいけないし、今までやっていなかったサークル活動もやってみたい。
 あと、私だけを見てくれて、私もその人だけを見つめていたいと思える人を見つけたい。
 やりたいことが、たくさんある。
 あしたからが、たのしみ。
 こころがかるい。
 なんて、しあわせな、きぶん。


「今日はオールでカラオケ行く予定になったーって久瀬さんのおばちゃんにメールしといたわ。やっぱり交換しとる、北村なんかに番号教えたらあかんやろ」
 パキン、という何かが割れる音がする。
「鳴子君、なにも壊さなくても」
「いや、あいつから電話がかかってくるだろうからな。赤頭にしちゃいいことしたぜ。オレが新しく契約してくる」
 誰かに、膝枕をされている。頭をなでられている感触が優しくて、気持ちいい。シーツの柔軟剤の匂いと、部屋のアロマの匂い、ここは、私のアパートだ。実家に帰るはずだったのに、どうしてここに。
 まだ、瞼が重くて目が開けられない。
「久瀬さん、起きないね」
「心療内科かかってるから、眠剤に耐性あるかと思って強めの薬飲ませたからな。そのうち起きるさ」
 どうやら、膝枕をして私の頭をなでているのは小野田君らしい。瞼越しに届く淡い光が遮られ、誰かにのぞき込まれている気配がして、その後ひやりと冷たい十本の指が私の首に添えられた。
「他の男と笑ってやがるから、もう少しで首締めて殺しちまうところだったぜ」
「え、今泉君やめてよ。…久瀬さん殺すなら、綺麗に殺してあげなくちゃ」
 首絞めるなんて顔が鬱血してかわいそうでしょ、と朗らかな声で今泉君に言っているらしい小野田君の、言葉の意味を理解することを脳が拒否している。
「二人とも物騒なこと言うなや」
 鳴子君が、いつも通りの調子で言った。ああ、鳴子君は、まだ。
「久瀬さんは、ずっとずうっと、オレらのこと迎えてくれる人なんやから」
 ストッキング越しに、足の甲に柔らかいものが押し当てられる気配がした。その後すり寄せられた感覚から、さっきのは唇で、誰かが私の足に頬摺りしているらしことが分かる。おそらくは、鳴子君だ。
「女と一緒にいるところを見せつけりゃ乗り込んでくるかと思ったのにな」
「すかして回りくどいことするからややこしいことになるんやろ」
「もう少しで、ボクたちのものになるとこだったのに。詩織さんがあんなに邪魔な人だとは思わなかったな」
「あいつ、オレたちのこと疑ってたからな。勘もいいし、明日の夜にはここに来るかもしれねぇ」
「杉元使ってコップ一杯ちゃんぽんしたウォッカ飲ませて、薬盛っても来るかー」
「でも、それまでに久瀬さんに教えてあげたらいいよ。ボクたちも、久瀬さんのこと愛してるってこと」
「時間は、まだ十分あるからな」
 瞼が、あげられない。
 なんて恐ろしい妄想だろう。
 やっぱり、三人に会っちゃいけなかったんだ。
 まだ、私が三人にこんなにも執着していたなんて。
 自分で自分が恐ろしい。
 だって、薬なんて飲んでない。
(もう帰る時間! お兄ちゃんうるさいの。このお蕎食べて。さっき取ってきてくれたんだけど)
 三人から食べ物や飲み物なんて受け取ってない。
(あ、うん。幹ちゃんまたね)
 あの挨拶の後、三人とは喋ってない。
(疲れたのかなぁ、目が霞む。幹事お疲れさま、帰るね)
(久瀬さんもだいぶ飲んだのね、誰か送れる?)
(あ、ボク送って行くよ)
 その声に振り返る前に、立っていられないくらいに眠くなって、背の高い誰かに受け止められたような…
(久瀬さんのこと、おそわないでよ)
(スカシのことはこのワイと小野田君がしっかり見張っとくから安心せぇ………)

 早く、こんな妄想からは目を覚まさなくては。
 きっと、ここは実家の私の部屋で、周りに人は誰もいない。頭や足の感覚は、実家のリリとルルとロロの三匹が暖をとりに私に寄り添っているからだ。
 でも、がんばれば動きそうな瞼を開けた瞬間から、新たな妄想が始まってしまう気がする。
 もう一度、眠ってしまいたい。


「起きてるんだろ、久瀬」
「ワイら久瀬さんには優しいから安心せぇ」
「そうだよ、久瀬さんが、ボクらをあいしてくれるなら」







 怖いよー
 書いてて怖かったよー
 ヤンデレってこういうので間違ってないですか。 








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