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理由。〜Reminiscences
by アキ
2011/05/01 23:06
※和泉さんのお話です
残念ながら礼は出番なしです
でも和泉にとっては大事なことなので載せちゃいます
曖昧に書いてるので多分分かりにくいです
あと、27が熟女か?と言われるとアレなのですが……

見直ししてないので誤字脱字あるかもしれません
ご容赦くださいm(__)m


それでもおk!
という勇者様どうぞ↓



「しっつれーしまーす!
いずちゃーん!おはよー」

ノンキな声に振り向くと、ニコニコ笑顔のバカがいた。

「今日はなんだ?」
「カッターで指切ったぁ」

ぎゅっと握ったままの手を振る女子生徒。

「っ、なんだよケガかよ早く言えよバカ!」



「いずちゃんいずちゃん」
「ん?」
「なんで保健の先生になったの?似合わないよ?口悪いし」
「うっさいよバカ
理由はあるよ言わないけど」



そう

理由はある





―――20年前


「せんせー」
「ん?
和泉ちゃんかぁ、なに?」
「ベッド貸してください」
「また寝不足なん?
大変なのはわかるけど、ちゃぁんと夜寝んと、背ぇ伸びひんよー?」
「寝ても今更伸びないよ」
「いーえ、二十歳までは伸びるんよ!せんせは19で2センチ伸びましたー
ま、和泉ちゃんは小さくてもかいらしいから、せんせはどっちでも好きやけどー」



そんな簡単に、好きって言わないでよ

本気じゃないって、あくまで生徒だって、いやなこと突き付けないでよ


先生



「……どうでもいいから、寝かせてください」
「和泉ちゃんのいけずー」



普段は訛らないように気をつけていたけど、だいたい失敗した先生。

その、歌うようなやわらかい京言葉が心地よかった。


たれ目の優しい眼差しが、長い髪が、白い肌が、落ち着いた声が

愛しかった。


ボケてるところも、実はズボラなところも、見た目に反しておっちょこちょいなところも

すべてが美点に思えた。




先生に会えるから学校に行った



でも、先生はいなくなった




たった一枚の手紙だけ残して



《 和泉ちゃんへ

突然のことで、驚かせてしまったならごめんなさい。
先生は、学校を辞めます。
和泉ちゃんと仲良くなれてよかったです。こんなこと先生が言ったらいけないのでしょうけど、生徒のなかで和泉ちゃんが一番かわいかった。だから、和泉ちゃんのことが心配です。
先生がいなくても、誰にも言われなくても、ちゃんとご飯食べて、しっかり睡眠とってください。
和泉ちゃんが、もしも先生を、少しでも気に入っていてくれたなら、私のお願いを聞いてほしいな。


あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今一度の逢ふこともがな


またね、和泉ちゃん。
先生より 》




詠は、よく母さんが口にしていたもの

よく知らないけど、もう一度会いたい、という意味らしい。



会いたいって、もう会えないからそう願ってるの?


先生……





ここまでが当時のこと

詠の本当の意味を知ったのは、少しでも先生に近付きたくて、先生と同じ、養護教諭になってからだ。



生徒が、百人一首を覚えると言ってぶつぶつ保健室で頑張っていた。

そのこは、本から顔を上げずに話しかけてきた。


「ねぇ、先生」
「なに?」
「和泉式部って、恋多き女とか、浮かれ女とか言われてたけど、どんな最期だったんだろうね。
あんな詠を残すなんて、淋しく亡くなったのかな」
「あんな詠って?」
「ほら、これ。一番有名なやつ」


そのこは本をアタシに見せてくれて、

そこには、あの詠があった。


あらざらむこの世のほかの思ひ出に 今一度の逢ふこともがな――


この詠は、死にゆく和泉式部が、多分、恋人に向けて詠んだもの。



つまり、先生は………





それからアタシは、必死になって先生の『あれから』を調べた。

母校に連絡して当時の教頭(校長はもう亡くなられたと聞いた)に会って、先生が自分の身体のこと、病気のことを知って辞表を出したことを聞いた。

休暇の度に京都に行って、先生の生家を探した。

やっと見つけたのは、詠の意味を知った3年後
あの時の先生を追い抜いてしまうまであと少し
もうすぐ27歳になる春だった。



「……姉の部屋にあったものはすべてこの家にあります――ご覧になりますか?」


先生の弟さんは、優しげな目許が先生と似ていた。


でもやっぱり当たり前だけど、先生とは違った。


「………いいんですか?」
「はい。此方へどうぞ」


彼に続き磨き上げられた廊下を進んで入った部屋には、ほとんどものがなかった。


「……姉は、自分で大体の荷物を処分してしまったらしくて…」


申し訳なさそうに言う弟さん。


気まずさに耐えかねて部屋を見回すと、机の上にきれいな箱があった。


「あの、…あれに触っても?」
「えぇ、どうぞ」


和柄の……高級そうな、多分和紙の箱。

紫陽花の模様が涼しげなその蓋を開けると
小さく折りたたまれた紙。


ひとの心を勝手に覗くことの罪悪感に胸がチクリと痛みを訴えたけれど、指が自然とそれを開いた。


《 見つけてくれてありがとう
六月生まれの君に
私の精一杯の思いを捧げるよ
どうか、どうか幸せになってください 》



たったこれだけ
アタシ宛てかもよくわからない

でも、確かにアタシは6月生まれで。


紙の下には深い緑色の石が輝くピアスが片方

淋しげに入っていた



「………これ、は…?」
「…おそらく、姉はあなたに向けてこれを遺したのでしょう。
私に宛てた手紙に、『小さくてかわいい子がきたら渡して』とありました。あなたでしょう?」





それからアタシは
ずっとそのピアスをつけている



家のゴタゴタに苦しんでいたアタシに、おおっぴらじゃなくそっと手を差し伸べてくれた先生。

それを忘れないように

先生のような優しさをもてるように




その後宝石店で見てもらった緑の石は、

アレキサンドライト

6月の誕生石だった



宝石言葉は



『秘めた想い』







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補足です
by アキ
2011/05/02 08:24
みなさん博識な方ばかりのようですので、必要ないかもしれませんが一応(。・ω・。)つ

和歌の意味
『私はもうこの世にあることもわずかだろうけれど、あの世にゆく思い出に、せめてもう一度あなたに会うことができたらなあ』

アレキサンドライト
クリソベリル(金緑石)の特に美しいものの宝石名。ロシアのウラル山脈で発見された。光のスペクトルで色が変化する。(青緑では緑色、赤では赤紫色)

紫陽花
花言葉は、一番一般的には『移り気』『あなたは冷たい』などですが、外国では『元気な女性』だったりします。

概ね私の怪しい知識ですので間違っているかもしれません。
鵜呑み禁止です(笑)


メイ子様
私の拙い文章から、しっかり意図を読み取っていただけたようでよかったです。説明不足もいいところですのに…
ありがとうございます(*^_^*)
珍しく終始真面目に書きました。和泉さんの現在の性格は、先生に心配されないように、というのと本来の性質の顕れかと思います(笑)
昔は気を張って生きていた彼女ですが、先生との出会いによってひとを好きになることができるようになり、礼によって愛を貰ったり与えたりできるようになった、というところでしょうか…
表面上は品行方正→おバカ
って変わりすぎだろ(´∀`)ハハハ
先生の言葉遣い……残念です。
京都弁よくわからなくて(;-_-+←じゃあ京都弁キャラにするなよ

書きたいことだらけでぐだぐだになってしまいました…
反省中です(´・ω・`)
次こそはマトモにできるようがんばります……


あーっ
失敗した
妹にすればよかった(´;ω;`)
弟じゃダメだ
『似てる』けど『違う』より、『他のひとからみたらほとんど差はない(同じお宅の娘さん的な意味で)』けど『和泉さんにとっては全然違う』にすればよかった……orz
……脳内変換、お願いします(笑)


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…っ(;_;)
by 管理人
2011/05/02 00:39
冒頭のアキさんのご説明で、もしかして…と思ったのですが、やはり和泉さんのピアスのお話…!期待値を遥か上行くシリアス、そして感動エピソードに、先程から涙と鼻水がエンドレス下矢印です…!だ、大丈夫です!27歳はアダルトな魅力が満載ですから!!(まずそこか)と言うか27歳の和泉さんと言う時点で全てがOKですよ!!!
ああでもまずというなら、最初に先生な和泉さんに萌えました(*´∀`*)口は尖らせつつも、しっかり優しいしずちゃん先生に学生に戻りたくなったバー…や、管理人ですv
そしてカワイイ生徒さんの言うように、何故和泉さんが保健の先生になられたのか気になった私ですが……り、理由が…っ(泣)。学生時代の和泉さんが、今とはかなり異なる雰囲気で、それが余計にこのエピソードの切なさを際立たせてるように思えました。今の和泉さんを形成したのは、彼女なのかなあ…と(;_;)
手紙も凄く泣けます…!ラストまで読み終えてから見返すと、余計にぐっと胸を締め付けます…。
最後を締め括る詠、その本当の、本当の意味を、和泉さんが知ることになるシーンでは、涙腺が愈々ガシャーンと崩壊してしまいました(T_T)和泉さんのあのピアスに、こんなにも深くいとおしいドラマがあったなんて…!
今回もアキさんの才能にコテンパンにされました。゚(゚´ω`゚)゚。だが心地好い!!←感動をぶち壊すな

大切な大切な思い出の一片(ひとひら)を読ませていただき、本当にありがとうございました…!


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