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休日の布団の中は非常に気持ちの良いものである。ナマエは半分寝ながらこの状況を楽しんでいた。
どたどたどた。
人がせっかく微睡んでいるところで部屋のドアが勢いよく開かれた。全くもって無粋である。
「起きろ!!」
「ノンレム睡眠中だからちょっと無理かな」
「起きてるじゃねえか!!」


3分後。
ヤウズが部屋の窓を全開にしてナマエの布団を剥ぐことでようやく起きた。相手が女性といえどヤウズは容赦しない。
「もっと寝かせてよヤウズくん……」
「今何時かわかるか?2時だ2時!」
「真夜中に女性を起こすのはどうかと思うよ」
「昼のだ!外みりゃわかんだろ!」
「馬鹿だなー。そんなことくらい見ればわかるよね」

――殴りてえ。
衝動を抑えながらヤウズは「手を貸して」とのたまうナマエの手を掴み、引っ張った。

「昼飯もう冷めてるけどちゃんと食えよ」
「何度も言ってるけど私は食事を必要としないの」

ナマエは食事を必要としない。
魔女だから。と決まって彼女は言うが、それは生きてもいるし死んでもいるというなんとも不思議な状態にあるからである。知識欲が高じた結果だった。
この状態になって数百年、ナマエはこの呪いとも呼べる何かを解くためにいろいろな方法を、あるいは死ねる方法を探し回っていた。

「ジジイも言ってただろ、あんたは人生楽しんだ方がいいって」
「布団引っぺがされるまで楽しかったんだけどな」
「そういうことじゃねえ。まあジジイみたいにしろとは言わねえけどさ、楽しみを見つけた方がいいとはおれも思う」
「それヤウズくんが言う?」

ヤウズがナマエを初めて見たときに抱いた感想は生ける屍とはこういうものをいうのだろう、というものだった。しばらく見かけなかったジジイ――皇帝がようやく帰ってきたと思えば人間を連れていたから、どこから攫ってきたのかと驚いたのを憶えている。聞けば、死に場所を捜しているというそうで、けれどそのときのヤウズは知り合いでもなんでもなかったからどうでもよく思っていた。
そしてしばらく一緒に暮らしていくうちにナマエも少しづつ元気が出てきたようだし、こうして心配する程度には仲がよくなっている。

「わかったよ、食べるよ。せっかく作ってもらったのに申し訳ないし。それにヤウズくんの料理はおいしいしね」
「ああ、そうしてくれ」

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