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オチがない




ガチャ、ガチャ、ガチャ。
あらかじめ崩しておいた小銭が財布から減っていき、代わりにカプセルの山が側に積み上がる。目当てのものはアンコモン、レア度はさほど高いわけではない。しかし、まあ物欲センサーというものはこういうときに働くもので。最高レアのもふもふモスマンが出ても目当てのデカいデカラビアは一向に出る気がしなかった。

「ミョウジ?」
肩に置かれる手。ガチャを回すことに熱中していた私は誰かが近付いてきていることにも気付かなかった。
「……なんだ三島か」
見知った顔に安心してそっと胸を撫で下ろす。
「え、お前いくら使ったの!?」
そう言われても数えていたわけではないからパッと答えられない。1、2、3……これ以上はあまり考えたくない。
「20個あるから1諭吉……?」
「けどスーレア出てんじゃん」
「違う。ほしいのはデカいデカラビア」
「あー……こういうのってほしいものに限って出ないよな、レア度に関係なくさ」
「だから三島に頼りたい」
「俺に!?……金、ないよ?」
「金なら出す。私が回すと物欲センサーが働くから駄目だ。出なくても怒らないから安心して引いてほしい」
「すげープレッシャーだよ」
そう言いながらも頭をひとかきしてそれとは反対の手で私からコインをひったくるのだから普通にいい奴だと思う。調子乗ると面倒なだけでイヤな奴ではないのだ、三島は。
「あ、」
「デカラビア!?」
「……ほら、ここ。オレンジが見える」
カプセルから覗くオレンジ。たしかにこのオレンジはデカラビアのオレンジである。
「おお……デカい……」
「俺に感謝してよ?」
「圧倒的感謝ー」
「ちょっと!心がぜんぜんこもってないよ!」
「ちゃんと感謝してるって。人目がなかったら抱きついてたくらい」
「お前に抱きつかれてもなー」
「ありがたみが薄れた……」
「え、ウソウソ、もっとありがたって!」
「三島に託して良かった」
「うんうん、もっと言って」
「三島ありがとう」
「どういたしまして!」
「でもあんま調子に乗ると運は離れて行くと思うよ」
「はあ……やっぱそうだよね」
自覚してる部分はあったのかがっくしと肩を落とす三島を横目に財布からまた500円を取り出す。もうゲットできただろ!?とでも言いたそうな三島の反応をヨソに投入口へ滑り込ませる。今度は無限回収と行こうじゃないか。期待しながらレバーを回して出てきたのはコモン。
「そう上手くいくもんか」
呆れたように三島は言う。同感だ。私も心からそう思う。

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