ガクガクと震える身体をギュッと抱きしめられて息の詰まる音を聞く。一気にけだるくなった四肢を汚れたシーツに放り出せば、今まで私の上に覆い被さっていたその人が横にずれた。
こちらに向けられた大きな背中には先ほど私がつけた爪痕が残っている。そっと指を伸ばそうとして…止めた。触れた所で、言い訳はどうする。傷が痛々しいから?何を言う。つけたのは私じゃないか。

…やっぱり止めよう。

シーツを裸体に巻きつけて私も彼に背中を向けた。




ナマエから好意を寄せられている事にはとっくの昔から気がついていた。それでも気づかないふりを続け、こうして時折肌を重ねる。

我ながら性格の悪い。

ナマエがこちらに指を伸ばすのが気配で伝わる。
これにも気づかないふりをすれば嗚呼、まただ。スプリングの軋む音が響き、ナマエの気配が遠のく。
俺はこれがたまらなく腹立たしかった。

情事後独特の怠惰感を無視し、身体を起こす。
そのまま俺の方から腕を伸ばした。すっぽりと腕の中に収まったナマエが甘ったるい声を上げる。


「ぁ…」

「ナマエ」


予想通りナマエは抱き返してはこない。行為中はあれだけ深々と爪を立てると言うのにだ。


「お前は俺が好きなのか?」


突然の問いにすぐに返事は返ってこないだろう。
それを良い事にナマエの温もりを今一度味わう。
豊かな胸を隠すシーツに手をかければ、細い指がようやく動いた。待ったをかけるように俺の手に触れる。


「……好き、じゃない…」


まったく、素直でないな。


そこに愛はあるのか/111018