人間誰しもギャップに弱いもので、私も例にもれずそれに当てはまる。普段人を馬鹿にしきったような奴がこうして見せる無防備な仕草に私はとても弱かった。
女ですら羨む白い項をさらけ出し、そこに手を当て頬杖をつくウィンガルに私はうっ、と言葉に詰まった。無駄に顔がいいだけあってそんな些細な仕草ですら様になる。頬に熱が集まるのが自分でも分かり、咄嗟に俯けば微笑する気配がした。


「お前は“これ”に弱いな」

「分かってやってるとか本当嫌な性格してるよね」

「それを知りながら毎回顔を赤くするお前もどうかと思うが?」


止めた。私はウィンガル相手に口で勝てた試しがない。
勝負を早々に放棄すれば、また戻って来る穏やかな時間。互いに何も語らず、暖かなお茶を飲みながら読書に耽るこの時間を私はとても大切に思っていた。毎日国の宰相として、その部下として気を張り詰めて生活している私達が、ただの幼なじみに戻るこの一時を。


「ああ、そうだ」

「ん?」


読書をしていたウィンガルは本やら視線を逸らす事なく何時もの調子で口を開く。


「お前は俺の仕草に弱いと言うが、俺も同じだ」

「…はい?」

「俺も、お前の頬を染めて俯く姿には動揺する」


何気ない会話のようでそうでない言葉の羅列が胸にじんわりと染み渡る。
先ほど同様、項に手を当てこちらを覗き見る金色の双眼はとても悪戯気に輝いていて。それに映る私の顔は、これまでにない程真っ赤に染まっていた。


染み渡り、爆発/111214