ネタメモに書いてたラスボス版陛下と通常時陛下が兄弟設定の現パロ話
捏造多々ありにつきご注意を




俺、正確には俺達には年の離れた幼なじみがいる。
俺より四つ上で兄さんより十下の彼女は昔からしっかりしていて、早くに両親を亡くした俺やカーラの母代わりをしてくれていた。父代わりの兄さんと並ぶとまるで夫婦のようだったのを覚えている。


『ナマエがお姉さんになってくれたらいいのに』


カーラの純粋な願望は幼い俺の心臓を深く抉った。
思えばあの時からきっと俺はナマエの事が、


「ナマエ、兄さんと俺どちらが好きなんだ?」

「またあ?」


長いようで短い歳月が流れ、自分達で何でも出来るようになってもナマエはこうして俺達の家に来ては夕飯の支度をしてくれている。トントンと規則正しく響く包丁の音を耳に、ソファーからその後ろ姿へ問いかければ苦笑混じりの呆れが返ってきた。


「何度言えばいいの。私はアーストもガイアスもどちらとも好きだって、」

「なら結婚するなら?」

「はあ?」


まな板に包丁を置いてナマエはこちらを振り返った。
濡れた手をタオルで拭く姿は主婦を連想させ、不思議と笑みが浮かんだ。


「結婚って、ガイアスはまだ高校生だしアーストは十も上じゃない」

「近頃年の差結婚は珍しくないってカーラが言っていた」

「カーラ…」


最近年上の恋人が出来てか妙に浮かれているカーラは、結婚を意識した発言をするようになった。それには一抹の寂しさを感じた物だが、その発言がこんな形で役に立ち、今現在感謝している。
対するナマエはうなだれ額を手で覆っていた。


「あのねガイアス、私はまだ大学生でまだ学びたい事は山ほどあるし今は彼氏なんて考えられないの」

「なら大学を出れば考えるんだな」

「…また勝手に」


盛大なため息をついてまたナマエはこちらに背を向けた。また響く包丁の音。きっともうまともな返事は返してくれない。
夕飯までは時間があるだろうし…近場にあった本を手に取り表紙を捲ったその時だ。

玄関からリビングに繋がる扉が音もなく開かれる。気配で分かってはいたけれど後ろを振り返れば、見慣れたスーツ姿の兄さんが夕飯の支度をするナマエを見て珍しく目を丸くしていた。


「あ、おかえりなさい」

「来るなら迎えに行くから前もって連絡を入れろと言っただろう」

「別にまだ明るいんだから平気よ」

「ナマエ…」


兄さんの表情にありありと苦悶が浮かぶ。ナマエは過保護ね、と笑い飛ばすが俺には分かる。兄さんは自分でナマエを守りたいだけなのだ。たとえ仕事中だろうと、送る事ですら弟である俺にも任せたくないほどに。


「最近は暗くなるのも早い。何かあったらどうするつもりだ」

「もう、妹扱いして…」


違う。兄さんはもう妹扱いなんてしていない。
兄さんは妹相手にそんな欲の隠った眼差しを向けたりはしない。そんな熱っぽく触れたりはしないんだ。

酷くいたたまれなくなって俺は本に視線を落とす。
カーラが置き忘れた本らしくタイトルは、


あなたが消えた日/120122


どうやら内容は悲恋らしい。


兄…アースト(ラスボス版)
弟…ガイアス(通常時)