「ちょっと、重い」

「うむ」

「人の話聞いてる?」

「うむ」

「(ダメだわこれ…)」


背中にのし掛かられて数分、女性であるレイチェルの体力は限界だった。
しかしこの夫は、そんな事は知ったことではないと言わんばかりにレイチェルの首筋に鼻を埋めて碌な返事も返さない。


「(足が震えてきた…)」


助けを求めようにもここは寝室。来るとすればローエンくらいなのだが、彼は妙な所で気が利く人間だ。助けてくれる確率は零パーセントに等しい。

はあ、とため息をつきレイチェルは仕方ないと身体に絡みつく、ガイアスの逞しい腕を引っ張った。


「ツラいのなら寝台で寝ましょう。私もそばにいるから」

「…うむ」

「ほら、歩く!」


何とも不格好な姿でズルズルと寝台に近づきそのまま倒れ込む。限界だった足はジン、と痺れた。


「やっぱり重い…」

「………」

「私が下にいる意味はないでしょ、って何そのまま寝ようとしてんのよ!?」

「レイチェル…」


突然掠れた声で呼ばれ心臓が大きく跳ねる。
疲れが現れているためか妙に色気が出ていて、たまったものではない。

言葉を詰まらせて首を捻らせれば微睡みつつある赤い目とかち合った。


「お前とこうしていると落ち着く…」


ああ、もうズルい人/111015


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