最近こんな事が多いなあ、と言うのが正直な感想だ。
今この場にいるのはナマエと、知らない女性が二人…一人は一度見た事のある元気の良い女性、そしてもう一人は見ず知らずの言葉の通じない大人しそうな少女。にも関わらず会話が成り立つのはこの元気の良い女性、ユイのおかげなのだろうとナマエは思う。彼女は黙っていられぬ性分らしい。突然見知らぬ女性と三人、全く見覚えのない場所に放り出されれば誰しも警戒し言葉を発せるはずもない。しかし彼女はナマエの顔を見るや否や破顔し両手を掴み上げた。そして驚き、身構えるナマエを尻目に涙ながらに叫んだのだ。


『その節はうちのサドが申し訳ありませんでした!!』


身に覚えがあった。
夫と同じ容貌をしながら、性格の全く違う男性…一気に全てを思い出し、ナマエは身震いをした。あの出来事はナマエの中で一種のトラウマとして残っていたのだ。

そこからはまあ、とんとん拍子に話は進み、どういう原理か言葉の通じぬはずの少女とも何故か意志疎通が出来ている。どうやら少女にも想い人がいるらしい。特徴を聞き出せばとある人物が浮かんだがまさかと振り払ったのはつい先ほどの事だ。


「さあ次はナマエさんですよ!」

「はい?」

「この中で唯一の既婚者!赤裸々に夫婦生活について語って下さい!!」

「はい!?」


ちょっとちょっと、そんなにキラキラした視線を向けても私は何も話さないぞ。
ユイはともかく、大人しそうに見える少女にまで輝いた視線を送られナマエは逃げ腰になった。しかしそれを許すユイではない。目にも止まらぬ速さでナマエの後ろへ回り込む。


「早っ!?」

「いやいやナマエさんには負けますよ」

「勝った覚えなんてないのだけど!?」


目の前にはキラキラと期待の眼差しを向ける少女、後ろには不気味な笑い声を上げるユイに挟まれまさに四面楚歌状態である。これは話すまで解放してもらえそうにない。ナマエは諦めた。ため息をついて頭を振り、降参を示せばナマエを挟み二人がハイタッチを決める。その楽しげな様子に少しばかり殺意が湧いた瞬間であった。


「……別にあなた達が望んでいるような話はないのよ」


ユイ達が望んでいるのは夢のような新婚生活。しかしナマエはそんな生活など送っていない。ため息混じりに今まで起こった夫婦間の出来事を話せば二人は少しばかり残念そうな顔をした。


「でも仲は良いんですね」

「そうね…仲が悪い訳ではないわね」


ガイアスはとても出来た男性であり、大人である。多少の事では気にも止めず、それゆえ喧嘩になった試しがない。むろんそれは第三者とて同じで、ガイアスと喧嘩している人物など見た事がなかった。


「…まあ、良い人の元へ嫁げたと誇りに思うわ」


口から漏れ出た本音に、自分で言ったにも関わらずナマエはうっすらと頬を染める。
またその本音をぶちまけられた二人はと言えば、互いの顔を見合わせて何とも形容し難い笑みを浮かべた。

十分ノロケてるじゃん。

二人の心境などナマエは知る由もなく、話は続く。
どうやら各自、まだまだ意中の相手の元へは戻れぬらしい。


三者三様/120316


遅くなって大変申し訳ありませんでした。
癒羅深光様に捧げます、夢主三人恋バナ話です。
しかし本当、異端シリーズのユイさんには助けられました!癒羅様の文章から伺える明るさや大らかさを表現出来ているかは不安ですが、ユイさんがいたからこそ会話が成立したのではないかと思います^^
それでは相互ありがとうございました!
これからも宜しくお願いします。