自分の両脇を陣取りながら口論を繰り返す二人にナマエは隠れて笑みを零した。
つい昨晩の事だ。
真夜中突然天井から落ちて来た時は奇襲かと夫と二人身構えた物だが、いざ灯りをつけてみれば人畜無害な少年少女が二人、ポカンとした面持ちでこちらを凝視していた。正確には夫であるガイアスを、だが。特に少女の表情は悲痛な物で、少女を庇い立つ少年は敵意を露わにした。だがそれも時が経つに連れ事態を飲み込んだのか、悲痛な表情や敵意も薄れ今ではこうして雑談するまでになっていた。


「姉貴その丸文字癖直せよ…」

「仕方ないでしょう、昔からの癖なんだから!」

「だから直すんだよ」

「もう夏希は、」

「まあまあ落ち着いて」


放っておけば幾らでも口論を続けそうな二人の仲裁に入る。同時にこたらを見た二人はやっぱり同じ顔をしていて、吹き出しそうになるのを慌てて抑える。


「私はその丸い文字もいいと思うけど。可愛いくて」

「え、えへへ」


照れて俯く少女、春は年相応で愛らしく思わず手が伸びてしまう。よしよしと柔らかな薄茶の髪を撫でると夏希が呆れたようにため息をついた。


「姉貴を甘やかし過ぎないで下さいよ」

「あら、そう?なら一つだけ注意しとくわね」


そう言うとナマエはペンを取り、先ほど春が書いた文字に直しを加える。この場に赤のペンはなく、同じ黒で書いたため多少見難い模範的な形になって行く自分の文字に春は瞳を輝かせた。


「丸い文字は女の子らしくってとても可愛いらしいけど、止め跳ねはちゃんとしないとね」

「うわあ、何だかナマエさん保健室の先生みたい!」

「保健室の先生?」

「医務官の教師版っすよ」


夏希の的確なフォローにより保健室の先生が何なのかは理解した。けれど何故文字の手直しをしただけで保健室の先生になるのだろう。
不思議がるナマエに春はへにゃりと笑みを浮かべる。


「理由、って言われると大した理由はないんですけどなんかこうイメージで」

「ああ、サボリで行っても寝かせてくれそうな」

「それは夏希だけでしょ!」


そしてまた始まった口論。
と言ってもそれは喧嘩と言うには優しく暖かい。現に互いを傷つける言葉は何一つ発していないのだ。
仲の良い姉弟だ。
口論を止めるでもなく、二人の間でナマエは夏希の淹れてくれた紅茶に口をつける。
ミルクを混ぜ薄まった茶色が二人の髪色と重なって見え苦笑した。


「あ、美味しい」


紅茶色の出逢い/120130


今度淹れ方を教えてもらえないだろうか、ついと視線を向けるが残念ながら今少しかかるようだ。


-------


大変お待たせ致しました!
そうき様へ相互記念に夢主共演話です!
まさか自分で春ちゃんと夏希くんを動かせるとは思わず、果たして二人の性格を掴めているかとても不安だったりします。

とりあえず我が家のシリーズ夢主は春ちゃんを可愛がりそうだなあ、と思います。
そりゃあもう猫可愛がりする勢いで。
そんで夏希くんに甘やかしすぎって呆れられればいいなあと(*´`)

ではでは長くなりましたが相互本当にありがとうございました!!
これからも仲良くして下さると嬉しいです^^