短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


そう、乙女の憧れ、ゴシックでロリータなお店。

……うん、おかしいのはよくわかってる。


「えっと、お母さんの好きな色はっと…」


何で昨日の今日でこんな突飛な行動に出たのかといえば何て事はない、明日がお母さんの誕生日だったから。
何の気なしに見たカレンダー。助かったコトを喜ぶべきなのか忘れ去られたコトを嘆くべきなのか…いやまあ誰に訊いても前者に違いないけれども、昨晩居間らへんに置き去りにされた後戻った自室で見たそれは、この世界は数字は算用数字を用いてくれてるため非常に助かったし前述の前者の気持ちすらあったってのに、見事にそれらを吹き飛ばしたのだ。そして同時に青ざめさせられる結果にもなった。

…今のお母さんに誕生日プレゼントを忘れたら後が怖すぎる…と。

でもそれだけじゃ何でこんな可愛いさ全開!みたいな好みの分かれるお店に来てるのかって話で。
一応私はリボンレースフリフリエトセトラ、エトセトラ…。…は、可愛いとは思ってるが、着たいとは思わん。二回目人生のあのお綺麗なカオならいざ知らず今の、生前の私には全く似合う気がしないからである。もはや視界の暴力、馬子にも衣装すら体現出来る気がしない。

お母さんの話だが、確かに生前一緒に暮らしてた彼女は実のところカワイイ物、者好きな傾向があった。
そんな彼女、今朝方姿を見た時のコトだった。コレだ!と思うと同時にだがしかし腰抜かすかと思った。顎は外れたけど。

今回の彼女。一体どんな仕組みなのか年齢むしろ体格詐欺なのか…そうそう、原作でのゴリ…おっといけね、美少女を思い出して頂けるとありがたい。そして私が口を滑らしかけたコトは黙っておいて頂けると非常に助かる。

どうやら流石に家族の前では元の姿でいるらしいのだが、外に出る際もとい仕事ではなんと少女姿で繰り出すコトにしてるのだそうだ。パッと見中学生手前らへん、高学年時代のお母さんといったところだった。勿論写真でしか知らないけれども。
因みに昨日はたまたま私が見てなかっただけだった。

そんなお母さんはあろうコトか年齢ガン無視(っつったら殺される)してゴシックでロリータ通称ゴスロリなアイテムでフル装備し、本日も颯爽と家を飛び出してゆくのであった…。

…美味しそうなお名前のあの彼女を思い出すと震えが止まらない。
実は私が見た昨日の元の姿さえも擬態で、更になんかを解放するとムキーン!てな感じになるのだろうか。

で、いつの間にやらそんな趣味に走ってしまったらしい母に、それならいっそ誕生日プレゼントにしてやらあ!と閃き、今に至るのだけども。
(因みに通販は論外。だって文字読めない)。


「あ、これなんか(ロリ版)お母さんに似合うかも…」


服や靴だとサイズの事があるから、無難にお母さんの好きな色で且つ甘ロリな髪飾りとかでもあげようと店内をフラフラする。と言ってもここはゴスロリはゴスロリでもピンク一色!とまでは行かないのでまだ大人しい方なのかなーと思う。あんま詳しい訳でもないから基準はわからんけども。
しかし色々取り揃えているのか、ざっと見る限り控えめなのやホントにあっまい感じなの、クラシカルなのやはたまたどっかの貴婦人だか王妃様だかがつけてそうなのまである。


「…ん?」


そして何となく周りを見てみたら私の他に数人のお客さんがいた訳だが、大概は少女から女性というキャワユイおなごと呼べる年代であるハズのその中に、親に連れてこられるならまだしも一人で来るには些か年齢のおかしい子を発見した。まだ…四、五歳くらい?
…つまり幼女に見える。

迷子でないとしたらすっげ、買い物か?親に頼まれたんだろか…え、いやいやここをどこだと思っとるよ。ゴスロリ専門店やで。


《はいどうぞ、お嬢さん。お母さん喜んでくれるといいわね》


ついついカウンター前にいるその子に何となく目どころか耳も行く。どうやら圧倒的に足りない身長によってか、店員のお姉さんがカウンターから出てしゃがんでその子に綺麗にラッピングされた小さな袋を手渡している。手帳くらいの大きさからしてこれから買おうとしている私と同じく髪飾りか何かだろうか。
そしてこくんと頷く何やら将来が楽しみな気がしてならないその子。どんだけだよって?なにも言うな。


《あら?》


勝手に観察して勝手な感想までいだいてると、そこに新たな店員さん登場。先の店員さんと違い女の子と面識があるようで、営業スマイルと言うよりは親しみが滲み出るような笑顔で、言った。


《こんにちは、カルトちゃん。今日はお母様は一緒じゃないのね》

「ブッ!?ゴッホゲッホ、ガフッ!!」


髪飾りコーナーはカウンターから距離があるからか、盛大に咳き込んだ私に幸い店員さん二人は特に気にした様子は見えない。
周りのお客さんには若干引かれた気がするが。


《…お母様、ほんとは来たがってたんだけど、急にお仕事入っちゃったから》


しかしその耳の宜しいであろうそして勘の良さそうな子は答えながら、チラリとこっちを見たよう…な…。





「…け、健気っちゃ健気だけどさ!あああ…」


背後には店員さんの「ありがとうございましたー」声すらかからない。だって絶したからね。

何を買うコトもなく猛ダッシュ…では、お店の迷惑になるため競歩よろしく(ここらへんで絶使用)店から転がり出たのは、言うまでもない。

……そういやあの家族、彼が何歳の時かは忘れたが猛者もさもさの(猛者が沢山いるの意)念を使えるならまだしも一般人じゃ命が幾つあっても足らんような戦場にポイしたんだっけ…?ホラ、こないだ(昨日)その地獄の名を聞いたから思い出したワケよ。


「……あ」


しかしお店から出て(逃げて)暫くしてふと我に返った私は、このまま帰ったら帰ったで後が怖いコトを思い出し、他のお店と商品を身繕って、事なきを得ましたとさ。





けれどもそこでチャンチャン、とはならないのがお約束。


「あの女の人…何か左右の目の色、違ってた。…しかも最後赤くなってた。ボクそんな目の人、仕事中にだって見た事ないんだけど」


一応忍術で黒にしておいたってのに背を向ける直前、焦ってしっかり解けてたらしい。
そう、昨日の朝、居間に向かう前に既に隠しておいたちぐはぐ両目、すなわちオッドなアイがポロリと…。
…あ、そういやその赤って緋なの?紅なの?それでけっこう私の立場変わってくると思うんだけども。

しかし勿論三十六計逃げるに如かず大作戦(そのまんま)を決行中だった私は気づかず、また呟きも聞こえるハズがないのだった。

…てか、キミのお母さんのお仕事て…。
……てかてか、あれおかしいなおばちゃんの証言からしてこの辺あの店アジトからメッチャ遠いハズなんですけどあ、もしやここいらでの仕事ついでにちょくちょく来る感じですか?

……とりあえず、盗み聞きもこうして難なく出来るようになってしまったこのエルフ耳(勿論忍術でカット済み)もさる事ながら、数十メートル離れてようが顔どころかそれまで正確に認めてしまうアホみたいな視力でしっかり見てしまった口許の黒子が印象的な子が、同姓(聞いてないけど)同名なだけの他人の空似であるコトを祈る。


「…あ、てか第一に、なんかちっちゃかったしな!」


原作前?
…フッ、なんのコトだかわからないな…。


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