● 君が居ないと笑えない @
『こんなに素敵なお花見って初めてかも』
弾んでそう言う君は僕に笑い掛ける。
『凄く、平凡なのにね』
特別何をする訳でもない、二人で過ごす夜。
『どうしてかしら…?』
―――何がだい?
『こんなに満たされた気持ちになるのは』
恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべる君。
『きっと貴方と一緒に過ごすからね…』
―――…僕も同じ気持ちだよ。
『沖村君』
君が居ないと笑えない
「―――っ澄佳さん…!」
自分の声が小さな狭い部屋に微かに響く。
明かりの点けていない部屋での光源は、カーテンの隙間からの窓明かりのみ。
そんな部屋の薄暗い天井を暫く見詰めたまま無意識に額を拭う。
すると額に汗をかいていた事に気付いた後、全身にぐっしょりと汗をかいている事に気付く。