● 777hitA ◇ Writer:norika
「それは変ですね。」
それを聞いた途端、伊綱が少し険しい顔付きになって言う。
まだ何の説明もしていなかった矢口は、何かを悟った様に真剣に述べる伊綱を驚くと同時に酷く感心する。
「何か心当たりがあるの??」
「いえ、生王さんって常に変なので。」
矢口は思わず芸人の様にずっこけそうになった。
それをくすくすと可愛らしくも憎らしく笑いながら見ている伊綱を軽く睨みながら、真剣に受け取り考えていた自分自身を矢口は少し恥じる。
「まぁ、冗談はこれくらいにして。
生王さんどう変だったんですか?」
改めて問う伊綱の表情は特別興味のなさ気な物だったが、矢口はよく思い出す為思考を巡らせる。
「んー、何だか凄く上の空で常にぼーっとしてる感じ。
少し歩き方もふらふらしてる様に見えたし…。
あと何か独り言ぶつぶつ呟いてたわ!」
思い出してくると同時に興奮した様に語調が強くなっていく矢口を見て伊綱は悪戯っぽく笑うと一言告げた。
「凄い観察力ですね。」
この言葉だけなら良い褒め言葉だが、伊綱の表情からして裏に何か別の意味がある事を矢口は察知する。
―――やっぱり気になるんですか?
と笑顔で訴えられているのを感じとった矢口は慌ててまた否定する。
「だからー!“気になる”からそんなに見てた訳じゃないってば!!
仕事柄観察力が鋭いだけよ!」
否定する矢口に対して伊綱は、私何も言ってませんよ?とにこにこしながら述べる。
確かに観察力の事以外何も言っていない伊綱に対して、過剰に反応し過ぎ、伊綱の思う様に動いてしまっている自分を矢口は再び少し恥じる。
そんな矢口を見て伊綱は今度は少し申し訳なさそうに笑う。
「すみません、さっき面白い位反応してくれたのでつい。」
その言葉を聞いて矢口は少し呆れた顔を見せた。
また同時に何をしても伊綱の笑顔には敵わない気がしていた。
今度こそ改まって伊綱は口を開いた。
「生王さんについて心当たりといえば…。
学生時代の友人の所に行きたくない、ってしつこく言ってた事位ですかね。」