● MONTH? @
―――癸生川探偵事務所
私は事務所の扉を勢い込んで開ける。
___ガチャッ
「うぅ〜寒い!」
「あ、生王さん。
こんにちは、あれ?
外は雪ですか?」
出迎えてくれたのは伊綱君、頭や肩に雪を乗せたままの私を見てとてもにこやかに笑っている。
「雪、玄関で払って下さいね。」
そう行って伊綱君は奥のキッチンへ消えた。
私は言われた通り玄関で雪を落とす。
雪を払ったコートを脱ぎ、暖房の程よく効いた部屋のソファーに腰掛ける。
私はようやくホッとする。
何ともなしにテレビを見ながらぼぅーっとしていると、しばらくして伊綱君がお盆を持って戻ってきた。
「あ、何勝手に寛いでるんですか。」
伊綱君は少しむっとした表情を作るが、すぐにクスッと笑うとお盆をテーブルの上に乗せた。
そしてその上に乗った2つのティーカップを見て私は心底驚く。
湯気の昇る温かそうな紅茶の注がれたティーカップ…。
「うぅ…ついに伊綱君も僕にも温かい紅茶を…。」
と感動のあまり涙を流し掛けた時。
「これは生王さんのじゃないですよ。」
とハッキリ言われた。
「へ?」
思わず私は間抜けな声を出す。
すると伊綱君が説明を始める。
「もうすぐ矢口さんが来るんですよ。
今事務所の前ってメールがついさっき入ったんで先に容れといたんです。」
そこで一旦区切ると伊綱君は満面の笑みで私の目の前にコースターを引いてコンッとグラスを置く。
「生王さんのはこっちですよ♪」
目の前にあるグラスは温かい部屋にも関わらず凍り付き、中に入っているアイスティーには氷が張っている。
「伊綱君!
何でこんななんだよ?!」
「あれ?紅茶嫌いでした?」
「いや、紅茶は好きだけどそうじゃなくてっ!!」
「じゃあストレートは苦手?」
「じゃなくてっ!!」
「レモンが良かったんですか?
今切らしてるんですよ〜。」
「だからっ。」
「ミルクティーにするならご自分でどうぞ♪」
「もう、いいです…。」
結局何時も通りなんだな…。
いい加減止めてもらいたいと思っていると、事務所の玄関が開く。