生王はまっすぐ癸生川を見詰めたまま、確かに心の底に何かを感じて居た。
「だから生王君。」
「“彼女”を“悲しい思い出”になんかするな。」
―――――あぁ、そうか。
そうだった。
僕に心の底から笑える事。
心の底から人を愛せる事を教えてくれたのは“君”だった。
………澄佳さん。
こんなに大切な事を教えてくれた君を今まで悲しい思い出にして居てごめんね。
すぐ近くで伊綱さんが僕に微笑み掛けてる。
癸生川はさっきと打って変わって『うひょー』とか奇声を上げて周りの人達に避けられて居る。
きっと大丈夫、僕には彼等が居る。
だからこれからは“笑う”よ、君を思い出す度。
君を悲しい思い出になんかしたくないから。
「ありがとう。」
『ありがとう』
End
2010.03.17.wed. norika 拝