● 君が居ないと笑えない L
降り注ぐ様に降る柔らかな瓣。
ひらひらと美しく、でも何処か哀愁を漂わせながら散って行く。
呼吸を整え様として、しかし強過ぎる“思い出”に生王は目をギュッと閉じた。
『沖村君』
『来年もまた』
『二人でここに来ようね』
笑う“彼女”に重なるのはどす黒い紅。
「ぅ、ぐっ…。」
とくぐもった声を発して、まだ疎らに人が居るにも関わらず生王はその場に膝を付いた。
生王はその態勢のまま両手で口元を覆った。
「生王君…。
君は“死”をどう捉えてる?
“人が完全に失くなる事”かい?
それとも“人が残った者に何かを与える事”かい?
“悲憤”や“憎悪”や“悲歎”と言う感情を。」
「くっ…ぅ……。」
―――僕は…僕は………。
追い付いた伊綱が慌てて生王に駆け寄りそっと肩に手を置いた。
その時何故か伊綱の手のぬくもりがとても柔らかく温かく感じた。