● 君が居ないと笑えない K

癸生川は紅茶を飲み終えるとすくっと立ち上がった。


「生王君!!」

「…へ?」


話題の中心になりながらも完全に輪の中から出ていた生王は不意に声を掛けられた為、間抜けな返事をする。


「付いて来るんだ!!!」

「えっ?!
わあっ!」

「ちょっ!
先生!!」


癸生川は生王の腕を掴むと思いっきりダッシュして何処かへ向かった。

生王は相変わらず引っ張られるがまま付いて行ったが―――正確には連れて行かれた―――、伊綱も少し膨れっ面になりながら戸締まりをした後、彼等の後を追った。











「ぜぇ、はぁ。」


生王は猛ダッシュして居た癸生川―――癸生川からすると決して猛ダッシュのつもりは無いのだが―――が急停止し腕を離した事でようやく解放された。

汗だくになりながらも生王は周りを確認する。





ここは去年、“彼女”と過ごした場所だった。


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テーマ「人外ファンタジー」
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