そのせいで昔の夢を見たのだと生王は思った。
ただ一人、人生で唯一心から愛した人との短い大切な思い出を。
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どの位時間が経ったのか分からない程の長時間―――或いはそれ程長くない時間をそう感じたのかもしれない―――窓から行き交う久々を眺めて居た。
最初に見た時よりも、公園から帰って行く人が多い事に気付いた生王は何気なくコートを羽織り徐に外へ出た。
まだ肌寒い季節、外出するには少々薄着過ぎる格好で外に出た生王は身震いする。
通りへ出ると桜見を終えた者達の声が耳に入る。
『綺麗だったね』
『楽しかったね』
『来年もまた来ようね』