● 君が居ないと笑えない B
お湯の蛇口を捻りシャワーから湯が出るまで待つ。
ふと小さな鏡に映る自分の姿を見る。
以前より少し痩せた身体と
「…酷い顔だ。」
青白くなった顔を見てどうしてこんな顔をして居るのかを考える。
暑くなった湯を思い切り頭から被る。
―――夢の中の彼女は笑っていたじゃないか…
―――なのに何故こんなに苦しいんだろう…?
せっかく一度戻った感覚がまた分からなくなるまで浴びたシャワーの蛇口を反対側に捻る。
近頃外が賑わっているのは皆『花見』を楽しんでいるからだ。
生王は冷蔵庫から取り出した水をコップに注ぐと、それを持ったまま行き交う人々を窓から眺めていた。
近くに桜の木を植えてある少し大きな公園がある。
普段は子供達がそこへ行く為にはしゃいだ声が僅かばかり聞こえるか聞こえないかだが、近頃は違う。
家族連れや友達のグループ、恋人達が近場で花見を済まそうとやって来るのだ。