―――数日後、癸生川探偵事務所
私は相変わらず事務所に訪れていた。
「こんちはー、伊綱君居るかーい?」
「こんにちは、生王さん。
あれ?
それは?」目敏く伊綱君は私の持っていた綺麗に包装された箱の事を聞いてきた。
「これはお土産、この前仕事で東北の方に行ってね。」
言いながら私はソファーに腰掛ける。
「そうだったんですか、ありがとうございます。」伊綱君は笑顔で受け取ると、奥から何やら封筒を持って来た。
「何だい?それ。」
「これ矢口さんから預かったんです、ナゾナゾを解いてくれたお礼にって。」「あぁ〜そんな事もあったなぁ。」
私は数日前の事なのに懐かしむ様に思い出していた。
東北、寒かったなぁ〜。
「生王さんが解いたんで開封せずに置いてたんです。」私は伊綱君が差し出した封筒を受け取ると封をあけた。
すると中には手紙と何かのチケットが入っていた。
「どれどれ…。」
伊綱君も覗き込む様な形で一緒に見る。
―――――――
この前はナゾナゾ解いてくれてありがとう!
実はあの時言ってた“友達”って確かに友達なんだけど今回は取材相手だったの。
『あれくらいのナゾナゾも解けないんじゃあ取材には応じない』とか言われちゃって。
だから本当に困ってたの、凄く助かったわ。
これはほんのお礼よ、楽しんで来てね♪
矢口v―――――――
「…だって。」
「じゃあそのチケットがお礼なんですね。
何のチケットなんですか?」「ん〜、何だろ?」
私は封筒に入っていたチケットを伊綱君と一緒によく見る。
『東北地方ツアーチケット♪』「と…東北…。」
「良かったですね♪
生王さん。」これでもか、という程眩しい笑顔の伊綱君を余所に私はがっくりとチケットをテーブルの上に置く。
「あれ…?」伊綱君は何かに気付いた様に置いたばかりのチケットを取りまじまじと見るとにやにやし始めた。
その様子を見て私は訝しげに伊綱君を見て問う。
「…何?」
「これ、ペアチケットですよ♪
誰か誘って行けますね〜。
この女たらしっ!」「何でそうなる!!」
何がそんなに楽しいのか、笑顔の伊綱君に対して私は思わず叫んだが、相変わらず伊綱君はにこやかなまま。
「彩子さん誘ってみたらどうです?」「彩子ちゃんは弥勒の助手だろ?
ってか何で彩子ちゃんなんだ??」
「じゃあ先生誘います?」「絶対にやだなぁ…疲れそう。」
「先生に聞こえますよ?
隣の部屋に居るんですから」「えっ!!」
そんなこんなでこのナゾナゾの問題は全て片付いた。
その後、私がどうしたのかは皆様のご想像にお任せします。
☆ HAPPY END ☆
▼おまけ▼生王は東北ツアーのチケットを見詰めながらうんうんと唸っている。
そんな様子を紅茶を入れている合間にチラッと覗く。
そして伊綱は小さく溜息を吐く。
(矢口さん…どういうつもりなんだろ?)ただ単に友達としてだとは思う物の、矢口に色々話したがまだ誰ともどうこうと言う気にはなれないし勿論そんな風に思う人も居ない。
(考え過ぎか、生王さんも気付いてないし。
忘れよっと。)
「生王さんお待たせしました〜。」そう言って伊綱は生王にキンキンに冷えたアイスティーを渡した。
―――今度“2人”にちゃんと何かお礼させて貰うわね!FIN
2008.12.26.fri. norika 拝