● 最後の願い G

1m程離れた場所でヴァンは立ち止まると両手を降ろしくるりとこちらを向いた。



そのヴァンと目が合った。





今にも、泣きそうな顔だった。




ヴァンは何か言おうとして居たが上手い言葉が見付からずに下唇を軽く噛んでいた。

ぎゅっと自身の手を握り締めて。

そんなヴァンを見て居られずに俺は視線を外す。


「ガキはガキらしく泣きゃ良いんだょ。」

「………泣く訳にはいかないんだ。」


ヴァンが小声でそう言った。

視線を外している為、表情こそ窺い知る事は出来なかったが震えたその声で想像は容易に出来た。


「もう、兄さんを思い出して泣くのは、イヤなんだ…。」


そうか、とだけ答えると俺はヴァンに背を向けた。

闇夜には星が溢れんばかりに輝いていた。

そう、何時も以上に煌めいている様に見えた。


ゆっくりと背後からこちらに向かって足音が近付いて来た。

その直ぐ後に、背中にふさりとした感触と共に少しだけ温もりを感じた。


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