● 最後の願い C

まるで実体が無いのに存在する者を見たかの様に、バッシュは確かにそう言った。

レックス―――その名はバルフレアも知って居たが何故バッシュが茫然自失して居るのか疑問に思い、声を掛ける。


「おい、アレはヴァンだ。
アンタは何を見てる?」


その言葉にはっとするとバッシュは慌てて落とした荷物を拾い集めながら苦い顔をした。

するとバッシュに気付いたパンネロが走り寄って来た。

大丈夫ですか?、とバッシュに尋ねながらパンネロは道具を拾うのを手伝った。

バッシュは落ち着きを取り戻す事なくパンネロに、すまない、とだけ言った。

そうこうして居る間にヴァンもその場に辿り着くと、バッシュは目を据えて彼をじっと見詰めた。


「ヴァン…何故、その様な格好をして居るのだ?」


その問いを聞いてバルフレアは、荷物を両手で抱えながらヴァンを改めて見た。

パンネロは何時もと変わらない服装だが、ヴァンは今まで見た事の無い服を着て居た。


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