● 最後の願い B
そんなバッシュの細やかな心遣いに、バルフレアは何も言えずにただただ溜息を吐いた。
―――どうも反りが合いそうにない。
自分に出来ない事をバッシュは当然の様にやってのけるのだ。
この様な時、どうしてもバルフレアは心に蟠りを覚えてしまう。
そんな事を思いながら結局は二人で歩いて居ると、前方から見慣れた二人が歩いて来た。
―――ヴァンとお嬢ちゃんか。
何気なくあまり元気の無い二人を見ていると突然ドサリッ!!と大きな物音がした。
その事には特に驚きはしなかったが、隣のバッシュを見てバルフレアは愕然とする。
バッシュは落としてしまった荷物を全く拾おうともせず、今まで見た事が無い程目を見開き、少しだけ震えて居た。
額からは膏汗が浮かび―――当然先程までは汗一つ掻いて等居なかった―――、少し脅えた様にも見える表情でバッシュはヴァンの方を見て一言呟いた。
「………レックス……!」